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バケガサウェンズデー

やって参りました水曜日。まだまだ序盤ですね。
相変わらずの単発モノ、のはず。

いつか書きたいと思っていた小傘のお話。バ可愛い子が好きな傾向なのかもしれない。
小傘ちゃん可愛いですよね、こう、さでずむしたくなりますよね。

今回、作品内で小傘の能力に関しての誇大解釈があります。
二次創作の解釈による設定付けが苦手な方はご注意を。


登場人物
霖之助 小傘 人里の方々



--------------------


外の世界では、妖怪を「人知では解明できない不可思議な現象」とし、古くから言い伝えてきたそうだ。
その起源は中国という国からであり、おおよそ数千年も前に上るという。
そんな昔の文献が今もこうして残っている辺り、妖怪という物が人間に与えた影響というのはよほど大きかったのだろう。


「やめろよぉ! おどろけよー! 引っ付くな、抱きつくなー!」


ところが現代の外の世界では、科学が発展しすぎたせいか、妖怪を只の自然現象の一部に過ぎないとした風潮が増えてきているらしい。
人々の妖怪へ対する関心が、時代と共に徐々に薄れていってしまった結果なのだろう。

しかし、それは違う。妖怪にも形があり、感情があり、確実に一生物として生きているのである。
幻想郷の人々は妖怪を形在る物と認識し、持ちつ持たれつの生活を送っている。
そしてなにより妖怪が居ると言える理由は、僕の存在が何より物語っていた。


「服引っ張るな、傘引っ張るなぁ! やめ、やめれぇー!」


そんな妖怪が生きていくための方法は、妖怪ごとに様々異なっている。一括りされてはいるが、その違いは歴然だ。
たとえば、神に分類される妖怪は、人々の信仰心を糧として有り続けることが出来る。
はたまた動物系統の妖怪は、生き物を食らうことで生き続ける。

そして、それらに属さない妖怪の大半は、人々の恐怖や畏怖といった感情を糧として、形を持つことが出来るのだ。
……恐怖や畏怖を与える存在、そのはずなのだが。


「やめて、やめてってばぁ! ゃん、その舌引っ張らないでぇ! うわぁぁぁん!」
「……何をやっているんだ、彼女は」


人里の一角、ちょうど魔法の森へと通じる人通り。
野暮用で人里に来ていた僕の目の前で、不思議な光景が繰り広げられていた。
傘を離すまいと必死に抵抗しているのは、化け傘の妖怪である多々良小傘。
彼女の周りには、彼女へと抱きついたり、傘や服を引っ張ったりと、楽しそうにしている人里の幼い女の子たちが数人。
小傘は涙目、少女達は笑顔。同じ場にいるのに正反対だ。

そう、人を恐怖させるはずの妖怪が、人に遊ばれていたのである。


「あ、りんの、霖之助っ。たす、助けてぇ!」


僕がその様子をどこか呆れながら眺めていると、小傘が僕の存在に気付いたようだ。
必死にこちらへと手を伸ばし、彼女は助けを求めようとするが。


「わーい、ぶらんこ!」
「みゃっ!? ぶら下がんないで! お、重い、重いからぁ!」


小傘の周りにいた女子の一人が、小傘の伸ばした腕に手を掛けぶら下がり始めた。
お世辞にも力があるとは言えない彼女では、片腕に少女一人をぶら下げるのも難しい。
重さに耐えきれなくなり、小傘が僕の方へと伸ばした腕は、虚しくも重力の趣くままとなる。


「あっ、危、ぶきゅっ!」


そしてその重力に引っ張られ、小傘はバランスを崩し……その場に転んでしまった。


「う、うぅぅ、りんのずけぇぇぇ」


顔に砂を付け、小傘がこちらを恨めしそうに見つめてくる。……さすがに、いつまでも眺めているわけにはいかないか。
そう思った僕は、転けた小傘の側にいた少女達へと歩み寄り、目線を合わせるように片膝をつく。
野暮用で抱えていた風呂敷の荷物が、ガシャンと音を立てた。


「ああ、すまない。ちょっとこの子に用があってね。
 君たちには申し訳ないが、彼女とはまた今度にして貰えるかい?」
「ほぁ……!」


小傘が転んだまま、あたかも拾う神を見るかのように僕を見上げた。
その顔は喜びに満ちあふれており、先程とは違う涙が零れそうにも見える。
それほどまでに窮地に立たされていたと感じていたのだろうか。そう考えると、少し眺めすぎてしまった気もする。

すると、僕の頼みを聞いた少女達の一人が不服な声を上げた。


「そうなの? もっとお姉ちゃんと遊んでいたかったんだけど……」
「遊んで!? わちきに酷いことして遊んでとか言っちゃうの!? 最近の子供怖い!」
「小傘、ちょっと静かに」
「む、むぐぅ!」


屈んでいた僕は、左手で小傘の口を塞ぐ。
おそらく小傘と少女たちの考えは、真逆になっているのだろう。今彼女に喋らせると、色々と面倒になる気がした。

予想はしていたが、やはり簡単なお願いだけで良しとしてはくれない。
楽しんでいる彼女らに僕が横槍を入れてしまったのだ。不服になるのは仕方がないだろう。
だが、そこを何とかするのが、僕の腕の見せ所というものだ。


「ふむ、そうか。
 それならお詫びに、コレを君たちにプレゼントするよ」
「ぷへっ」


そう言って僕は小傘から左手を外し、背負っていた風呂敷を少女達の前へと降ろす。大きな風呂敷に、少女達は興味津々のようだ。
丁度、今日ここを通りかかって正解だったと言うべきか。まぁ、ある意味大外れとも言えるのだが。
僕が注目の的な風呂敷の紐を解くと、少女達から歓声が沸いた。


「あっ、かわいい!」
「お兄さん、これ貰っていいの?」
「ああ、好きなモノを持って行くと良い。ただし、一人一つまでで頼むよ?」


僕の言葉に頷くと、少女達は嬉しそうに風呂敷の中にあったぬいぐるみを選び始める。
その様子を見て、僕は小さく安堵の息を吐いた。

風呂敷の中身。それは、子供向けの玩具や人形・ぬいぐるみたちだった。
水曜日の今日、僕は里の広場でバザーが行われるということで、珍しく商売をしようと訪れていたのだ。
そこで持ってきたモノが、外の世界の玩具と人形。
外の世界の玩具やぬいぐるみは、非常に良くできており、可愛さや格好良さというものは、世代時代関係なく売れる万能品である。
そしてバザーでは様々な年齢層の人が訪れるため、これらが一番良く売れると見込んでチョイスしてきたのだ。


「お兄さん、決まった!」
「それでいいかい? 大切にして貰えると嬉しいね」
「うん! それじゃあまたね、傘のお姉ちゃん!」
「またねー」
「ま、また!? またわちきこうなるの!? というか、せめて一度は驚いてぇ!」


小傘の声も虚しく、ぬいぐるみを手にした少女達は、小傘に手を振りつつ去って行ってしまった。
なんとも、彼女にしてみれば踏んだり蹴ったりな結果と言える。


「一応、彼女たちには去って貰ったが……これで良かったのだろう?」
「あっ、うん。ありがと霖之助、もうわちきダメかと思った……」


小傘はそう一言告げて起き上がり、ぱんぱんと服に付いた砂を払う。
その顔は、助かった喜びと子供達を驚かせられなかった無念さが織り混ざり、どういった表情をすべきか困惑しているように見えた。


「……ふむ、とりあえず場所を変えようか。一応、君に話があるという名目だったからね」







「この間食セットを一つ。以上で」


商品を指差し、そう伝える。
注文を採りに来た女性店員が、自然な笑顔を浮かべた。


「間食セットですね、ありがとうございます。少々お待ちくださいませ」
「ああ、お願いするよ。
 ……で、小傘。君は一体何をしていたんだ?」


場所は変わって人里の市場大通り、その一角の小さな甘味処。
あれから数刻。僕らは場所を変えるべくここへ移動し、長いすに座って休んでいた。
昼を過ぎた辺りの人通りは未だ衰えることはなく、活気に満ちあふれている。
そんな中この甘味処は、里の一角だからか人の数は落ち着いており、一つのオアシスの様にも思えた。

そして僕は、汚れた服を正して気持ちを落ち着かせ終わった小傘に問いかけてみたのである。
大体は予想の付く答えが返ってきそうだったが、とりあえず質問はしておくべきだと思った。

すると小傘は一息吐くと、ポツポツと話し始めた。


「ええと、今日はお腹が結構空いてたから、いつものお墓から人が沢山いそうな所に移動しようと思ったの」
「それで人里に来たわけか。人が居ると言ったらここしかないからね」
「うん。それで、子供を驚かそうと思って狭い路地の物陰に隠れたんだ。急に出て来たら、子供なら少しはビックリしてくれるでしょ?」
「考えは安直だが、この時間帯に驚かすにはその選択は正しいと思うよ。……成功したのかい?」


僕がそう聞くと、小傘の体がピクッと動いた気がした。
その様子を見るに、結果は……。


「ううん、わちきが出て行ったらあの子達、なんだか嬉しそうな顔したの。
 そしたら、寄ってたかって、わちきを、いじめ、始めてっ……うわぁぁぁん!」


話すのが耐えきれなくなったのか、小傘は話の途中で急に泣き出し、僕にひしとしがみついてきた。
溢れ流れ出す涙と鼻水を、ひたすらに僕の服で拭おうとする。
正直止めて欲しかったので、僕は小傘を肩をグイと押しやった。


「ああもう、泣くんじゃない。泣いたところで何も変わりやしないよ」
「だって、だってぇ! 容赦なくグイグイグイグイ引っ張るんだもん! 怖かったよぉぉぉ!」
「あれはかなり懐かれていたように見えたんだが……」


おいおいとなく小傘を尻目に、僕は顎に手を宛がい考える。
あの少女たちは、ただ純粋に小傘を「遊んでくれる人」と見なしていた様に見えた。そうでなければ、あそこまでフレンドリーに小傘に接触したりはしないだろう。
そして、極めつけは小傘の言動だ。おそらく少女達は、小傘のあの反応を遊んでいるリアクションだと思っていたと考えられる。
悲しきかな、どうやら小傘の反応が、子供達の遊び心と合致してしまったのだろう。
子供は、相手を考えて行動するのが難しい。その結果、小傘はイジメられていると感じ、子供達は遊んでいると感じる空間が生まれてしまったわけだ。
小傘の言動が他人の嗜虐心を擽るようなものであることが原因であるような気がするが……それは置いておく。

泣いている小傘に対して周りの視線が集まり出したので、僕は小傘に語りかけた。


「小傘、とりあえず泣き止んで貰えるかな。僕が悪者になった気分だよ」
「うー、ごめんなざい。ほんとに怖くて、わちきどうなっちゃうのかと思って……」


涙と鼻水を滴らせ、小傘がえぐえぐと話す。
そんな姿を見ていると、本当にこの少女が人に恐怖を与えることを糧とする妖怪なのかと疑いたくもなる。


「む? 待てよ……?」


いや、彼女は、もしかすると、もしかしたら……。
と、その時。僕と小傘が座っていた長いすに、注文した甘味を持った先程の店員が歩いてくるのが見えた。


「お待たせ致しました、間食セットでございます」
「ああ、どうも。そうだね、この子に渡してあげてくれ」
「かしこまりました、どうぞ」
「え?」


僕の言葉を聞いた店員が、小傘の横に注文した間食セットの皿を置く。
みたらし団子二本、大福二つに焙じ茶という、まさしく間食と言える代物である。
店員の手に白い粉が少し付いていたので、おそらくこの店員は配膳に加え、甘味の陳列・装飾もする人なのだろう。
小傘は僕と店員のやりとりが理解できなかったようで、間食セットと店員を見比べるように見ていた。


「他にご注文はございますか?」
「いや、今は特に。あったらまた呼ぶよ」
「かしこまりました。それでは、ごゆっくりどうぞ」


一礼すると、店員は店内へと入って行った。
客に対する柔和な対応、言葉遣いの良さ、良くできた店員だ。
店の質は従業員で顕れる。肝心の商品を頂いてはいないが、おそらくここは良い店なのだろう。

店内に向けていた目を戻すと、小傘は未だに訳が分かっていなかったらしく、どうすればいいのかとこちらを見ていた。


「あの、霖之助、これって?」
「店に寄ったのに、何も頼まないわけにはいかないだろう?
 僕は食べる気分でないから、君が食べてしまうと良い」
「! いいの? わちき美味しく食べちゃうよ?」
「ああ、それで構わない」
「やったー! それじゃあ貰っちゃうね!」


僕の許しを得るや否や、小傘は嬉しそうに皿に並べられた大福を手に取り、食べ始めた。
甘い物が好きなのだろうか、一口食べるごとに幸せそうな顔をしている。先程の店員も、そんな小傘を見て嬉しそうに目を細めているのが見えた。
ここまで喜んでくれるのなら、譲った甲斐があったというものだ。

そんな彼女を見つつ僕は、先程気になったことがあったので、彼女が大福を一つ食べ終えた時を見計らって話しかけた。


「少し、質問しても良いかな?」
「? いいよ、どうしたの?」
「今、君は食べ物を食べているが、それで空腹を満たすことは出来るのかい?
 君の本来の空腹の満たし方とは、かけ離れている手段だと思うんだが」
「あ、うーんと……」


僕の問いかけに小傘が考える素振りをする。
ここで出た答えによって、今の僕が考えている事が正しいかどうかが決まるのだ。

願わくば、予想していたとおりの答えであって欲しかったのだが、


「んー……それがね、私もよく分かんないの」
「分からない?」


予想とは違った答えが返ってきたので、僕は思わず聞き返してしまった。
満たせるか満たせないか、○×の答えが返って来ると思っていたのだが、自身のことが分からないとは一体どういう事なのだろうか。

小傘の言葉に考えを巡らせていると、小傘自身が付け加えるように説明を始めた。


「えっと、分からないっていうのは、お腹が一杯になる時とならない時があるからなの。
 だから、ご飯を食べることでわちきの空腹が満たされるかどうか分かんなくって……」
「! ほう、なるほど」


小傘の補足を聞いて、徐々に僕の脳内で考えていた事柄のピースが当てはまってきた。
しかし、まだ完成ではない。あと少しの確証が必要だ。
僕は答えを求めるべく、更に小傘へ問いかける。


「もう少し質問するよ。
 その空腹が満たされた時の食事は、誰かに食べ物を貰って、その人の前で食べた時じゃなかったかい?」
「え? うーん……あ、そうかも。
 命蓮寺で聖にご飯作ってもらった時とか、緑の巫女にお煎餅貰って食べた時とか。必ず誰か居たような気がするよ」
「そして、空腹が満たされなかった時の食事は、1人で食事をした時だと思うんだが……合っているか?」
「うん、そうかもしれない。お墓のお供え物食べたときとか、お腹いっぱいにならなかったし」
「そうか……ふむ、間違いないな」


予測していた回答を得て、僕は確信した。
まだ不確定な要素はあるが、些細なものだ。この考えで間違ってはいないだろう。
1人合点がいった僕を見て、小傘が不思議そうに窺ってくる。


「霖之助? 何が間違いないの?」
「君についてさ。
 落ち着いて聞いて欲しいんだが……君は、人の恐怖だけで空腹を満たす妖怪ではないと考えられる」
「えっ!? ど、どういうこと?」


小傘の顔が驚きの表情一色になる。
いきなり「君は○○の妖怪ではない」と否定されたのだから、驚くのも無理はないだろう。
ただ、僕が確信したことは、決して彼女の存在自体を否定することではない。
強いて言うなれば、多々良小傘という妖怪の設定に、補足を加えるようなものだった。


「まぁ、聞いて欲しい。
 先程、僕が君を子供達から助けたとき、君は残念な顔をしていただろう。
 それは、子供達を驚かせることが出来なくて、空腹を満たす目的が果たせなかったから。違うかい?」
「そうだけど……どうして分かったの?」
「顔に出やすいんだ、君は。
 だが、今はどうか。お腹は空いているかい?」
「……あれ? そういえば空いてないや。え、どうして?」
「つまりはそういうことさ。
 君が糧と出来るのは、人の驚きや恐怖といった感情だけじゃない。
 人が君に向けた感情そのものを、君は存在の糧、空腹を満たすモノに出来るんだ」
「ほ、ほぁ!?」


小傘の顔が、再び驚きの表情へと変わった。
どうやら僕の説明で理解はして貰えたようだ。それでも、落ち着くことは出来なさそうではあるが。

多々良小傘という付喪神と知り合い、今まで彼女の行動を眺めていたが、僕はどうも疑問に残ることがあった。
それは、人を驚かすことで生きる糧を得るのならば、何故彼女が今の今まで生き残ることが出来ていたのか、ということだ。
命蓮寺の墓場をテリトリーにするまで、彼女は古典的過ぎる方法で人を脅かしてきたらしい。
妖怪が最も力を持っていた頃はその方法で大丈夫だったと言うが、それはかなり昔の話だ。今となっては、驚く人間なんて殆どいない。
驚かした人間の感情だけで生きるのであるなら、彼女がこうも普通に生活するのは難しい。常時空腹の状態であってもおかしくないだろう。

だが、今回の小傘を見てようやく納得がいった。
こうして子供達に遊ばれ、店員を笑顔にさせることで、彼女は餓えを知らぬうちに満たしていたのだ。
彼女の事だ。空腹が満たされたと気付いても、それが何かは理解できずに過ごしていたのだろう。
命蓮寺で食事をしたという時も、緑の巫女という人物に食べ物を貰った時も、同じ事があったと考えられる。
おそらく相手は、美味しそうに食べる小傘を見て何らかの感情を抱いた。それが彼女の餓えを満たしたのである。
1人の時の食事では空腹を満たせなかったということは、この考えの裏付けとも言えよう。

しかし、自身に向けられた感情のみで生き永らえることが出来るとは、全く持って驚きだ。
彼女が凶悪な妖怪ではなく、ただの付喪神で良かったと、僕は1人安心する。
すると、驚き終えたのか、小傘がこちらを窺っていることに気が付いた。


「落ち着いたかい?」
「あ、うん。ビックリさせるはずのわちきがビックリしたよ。
 ……ねぇ、わちきからも、霖之助に質問して良い?」
「僕に? 構わないが」


僕がそう言うと、小傘は「よかった」と小さく言い、こちらを真っ直ぐ見て口を開いた。


「あのさ、どうして霖之助は、
 わちきに今のことを教えてくれたり、さっき助けてくれたり、食べ物くれたり……優しくしてくれたの?」
「……優しく、か」


小傘のごく普通の問いかけに、僕は答えを言い淀んだ。
その問いかけは、軽い口調で言っているようで、真剣さも感じられる。
おそらく小傘は、ただただ疑問なのだろう。確かに、僕自身も今日はやけに小傘に対して世話を妬いた気がする。
しかしそれが何故なのか、彼女の小動物オーラにでもやられたか、答えは上手く見つからなかった。


「わちきが道具だから? 霖之助って道具好き好きさんだったよね?」
「君は妖怪で、こうして生きている。すまないが、生き物を僕は道具と考えていないよ」
「じゃあ、どうして? わちき、霖之助の役に立ててないのに……」


小傘がどこか寂しげに問いかけてくる。
確か「自分から役に立つ道具になりたい」というのが、小傘の考えだったか。
元道具故の性か、付喪神であっても人の役に立ちたいと思ってしまうのであろう。

だが、その小傘の発言には、大きな間違いがあった。


「……いや、君は僕の役には立っているよ、意思疎通が出来るからこそね。ただ、気付くことが出来ていないだけだ」


僕の言葉に、小傘の顔が嬉しそうにぱぁと輝いた。
話を逸らす形になってしまったが、それでいいと僕は思う。不完全な回答は、彼女も望んでいないだろうから。


「えっ、そうなの!? わちき、一体何の役に立ってるの!?」
「そこまでは言えない。君が気付かないと意味が無いからね」
「そ、そんなぁ。
 うむむ、霖之助の役に立っている事ってなんだろ、なんだろうなぁ……!」


悩みながらも、どこか楽しそうに小傘が考え始める。
何がどう役に立っているかはまだ理解できていないが、自分が誰かの役に立てている事実がこの上なく嬉しいのだろう。

僕にとっては、小傘が気付いていないのが不思議なくらいである。
彼女は虐められたと感じていたが、あの子供は遊んでくれていると感じ、笑顔になっていた。
出された間食セットの大福を幸せそうに食べ、店員を笑顔にさせていた。
そして今、彼女の目の前にいる僕さえも、笑顔にすることが出来ている。……これを、人の役に立っている以外になんと言えば良いだろうか?

彼女は、一部の子供達……いや、一部の人間にとても愛されているのだ。
だがしかし、それを僕が伝えるのは、野暮というものであろう。


「……さてと、それじゃあ僕も、間食セットとやらを頂くとしようか」
「えっ、くれるんじゃなかったの!? 大福一個残しておきたかったのに!」
「全部あげるとは言ってないだろう」
「でも食べる気がないって言ったじゃん! う、ウソツキさんがいるよ!?」
「お金を払ってくれるのなら、別に食べても構わないんだが」
「! お、おうぅ。なんでも、ないです……」


自分が金銭を持っていない事実に気付き、小傘はぷるぷると震え、俯いた。
僕に支払って貰うわけであるから、言い返せなくなったのだろう。大福へ対しての後悔からか、目には涙を浮かべている。
そんな表情豊かな彼女を見ていて、僕は思わず小さく噴いてしまった。


「ひ、酷い! わちきを虐めて笑うとか、さでずむ、この上なくさでずむだよ!」
「虐めているつもりはないよ。それに、勝手に泣き出しそうになったのは君だろうに」
「ねぇ、お願い霖之助。大福、大福さんだけはちょうだい!」
「……支払い」
「ひぅ……あ、また笑った!」
「いや、すまない。君が余りにも分かりやすくてね……クッ」
「謝る気無いよね!? もぅ、霖之助のさでずむ!」


怒る小傘に対し、僕は呆れつつ……内心では微笑ましく応える。

小傘と接して、僕はふと思う。
「自分から役に立つ道具になりたい」
彼女の付喪神としての大きな目標は、彼女の知らぬ間に十分叶えられているのではないか、と。


保留にしてしまった彼女からの質問は、ゆっくりと考えるとしよう。時間は、きっと有り余っているはずだから。
大福を取ろうと必死になって手を伸ばしている小傘の頭を抑えつつ、僕は一人そう考えていた。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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