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例大祭9・SS「雪色セレクション」サンプル

例大祭までもうすぐと言うことで、例大祭9新刊予定の本から私のSSをちょちょいと。
未だ予定となっているので不確定なのですが、このSSだけは出せるようにしております。
オマケ程度の長さなので、ゆっくりよんでいってね!


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『はふぅ、物足りないわー』
『おや、どうかなさいましたか幽々子様? 夕餉のデザートはたった今、食べ終えたじゃありませんか』
『そ、そこじゃないわよ。そんなに私は食べ物のことを考えているわけじゃないわ』
『……えっ⁉』
『つぶあんだと思って食べたらこしあんだった時のような顔しないで頂戴よ……。そうじゃなくて、私の言う物足りないっていうのは、この日常のことよ。毎年そうだけど、ただ雪景色を見るだけじゃつまらなくなってきちゃったわ』
『そうですか? この幻想的な景色、私は飽きたことはありませんが……』
『よーむは感受性がいいのねぇ。若いっていいわね、ほんとに、ほんとに』
『何で二度言われたんですか。そんな恨めしそうに見られても、私にはどうしようも出来ないですよ……』
『だって私、亡霊だもん。って、ボケてる場合じゃないのよ。そこで私、春も近いし明日の夜に最後の雪見を行おうと思っていてね』
『なるほど、素敵ですね。一人より大勢で見た方が、また違った趣もありそうです』
『ふっふっふ、甘いわ妖夢。大勢で見ると宴になって、騒がしくて雪見どころじゃなくなっちゃうじゃない。そこで今回、行う雪見は小規模にして、呼ぶ人は一人だけにすることにしたのよ!』
『騒がしくする筆頭って幽々子様と紫様じゃ……』
『こ、細かいことはいいのよ。とにかく、妖夢。貴方には、その雪見に呼ぶ一人を選んで貰いたいのよ』
『ええっ⁉ わ、私が選んでしまっても宜しいんですか? 幽々子様のご期待に添えられるかどうか……』
『もっちろん、私がしっかりと条件出すわ。貴方にはそれに値する人妖怪を連れてきてくれればいいの』
『連れてくる方の条件、ですか――』


雪色セレクション


「だから、本当に霖之助さんは酷いんです」
「あらあら、それは大変ねぇ」
「むむ、幽々子様、ちゃんと聞いてくださってますか?」
「あらいやねぇ、ちゃんと聞いているわよ? あれでしょ? 最近人里に出来た飲食店の飲茶がおいしいっていう……」
「なんですかそのベタな聞き間違い⁉ 全然聞いてらっしゃらないじゃないですか、霖之助さんも何か言ってくださいよー!」
「……いや、どうして僕が自分に対する悪口に荷担しなくてはいけないんだい」

僕こと森近霖之助は、目の前で繰り広げられているベタベタな会話の展開に頭を抱えた。
妖夢が話すだけ話し、西行寺幽々子が相槌を打ち、僕が嘆息を吐く。先ほどからずっとこの繰り返しだ。無限ループは恐ろしいという話を知らないのだろうか。
しかも妖夢の話す内容は、何故か僕に対する不満や文句だけ。聞いている僕本人は耳が痛いばかりである。

白雪降り積もる夜の冥界に、ただ一つ佇む御殿白玉楼。その御殿、玉砂利の敷き詰められた大きな庭にて、小さな雪見が催されていた。
主催者は白玉楼の主である西行寺幽々子という亡霊と、白玉楼にて住み込みで勤務している魂魄妖夢という半人半霊の少女。二人は今、玉砂利の上に用意された数枚の畳に座っており、側には大きめの番傘が立っている。
その畳の上には、食欲をそそる美味そうな料理が入った檜の重箱が数点。白菊や八海山といった高級な一升瓶と、焼きの良い陶器の御猪口が数点並ぶ。
森羅万象、どんな人、妖怪、物怪が見ても、春ならば花見、冬ならば雪見をしているのだと理解できるほど、完璧で完全な宴布陣であった。

そして、そんな冥界で執り行われている行事にイレギュラーな人物が一人……それが僕である。

「大体霖之助さんは出会った当初から酷かったんですよ。雪に埋もれて寒がる人を放っておくなんて、人間の所行とは思えませんっ」
「僕は半人半妖だよ。それに、結果的には雪をどかしたじゃないか」
「妖怪の部分が見あたらないのでいいんです! それに、私の話に興味が向かなかったらあのまま放っておくつもりだったんですよね? その時点でもう悪人です、極悪人ですよ!」
「ごり押し理論ね」
「ああ、ごり押しだね」
「い、いいんです! 要は霖之助さんがいけなかったんですっ」

言うと妖夢は、感情を表すように、手に持っていた空の御猪口をタンッと強く畳に置いた。そのまま間髪入れず、側に用意してあった八海山を注いでいく。この光景を何度見たことだろうか。優にもう十数回は超したような気がする。
そう、当の本人の前で愚痴を遠慮無く宣うこの半人半霊半人前の少女は、この雪見によって完全に酔っぱらっていた。

「幽々子様幽々子様、聞いてくださいよ。その後も霖之助さんったら、大切な道具を人質に取ったんですよ?」
「うーん、ちょっとちょっと、香霖堂さぁん。そろそろこの子のコレにも飽きて来ちゃったわ。どうにかして貰えたりするかしら?」
「どうにかと言われても……どうにか出来るのなら、すぐさま止めに掛かりたいのは山々なんだがね」

少し呆れ気味に話しかけてくる白玉楼の主に、僕も呆れ気味に言葉を返した。目の前にいるこの酒酔い少女は、見かけによらずかなりの強者なのだ。
情けない話ではあるが、今の状態の彼女を止めるほどの力を持っているのかと聞かれたならば、僕は「ノー」と即答できる。無論、普通の状態の彼女の場合も然り。
そもそもインドア派とアウトドア派を同じ土俵に上げること自体が無謀な行いなのである。やるのであれば、もっと武力行使でガンガン行く巫女や魔法使いを持ってくるべきというもの。只の店主をぶつけるなんてとんでもない。
ああ、それにしても僕は、何故わざわざこんな悪口を言われるためだけに来たのだったか……。


それは、宴会が始まる数十時間前に遡る。

         ◆

「冥界の雪見、か」

表の扉の札を商い中に反し、ストーブを点け始めて間もない香霖堂。普段聞き慣れない単語の響きに、僕は少し興味を惹かれていた。

「はい、いかがですか? 夜の冥界の雪景色は、浮遊する霊たちと相まってとても幻想的なんですよ」

楽しそうに笑顔で話しているのは、半人半霊の少女、魂魄妖夢。店を開いてから間もなく訪れて来て、「今日は予定があったりしますか?」と僕に突拍子な質問を投げかけてきた非常識な少女である。
彼女は手に何も持っておらず、おそらく僕にこの話を持ちかけるためだけに来たのだろう。
せめて何かこちらを期待させるような会話から始めて貰えれば、僕としても話に乗りやすいのだが……彼女には無理な話か。
神霊騒ぎの頃から彼女を目にしていなかったが、そんな短い期間ではさほど人は変わるはずもない。

ふむと一息入れ、僕は考える素振りをする。話に乗り気ではなかったが実のところ、彼女から持ちかけられたこの話は、僕にとって悪くはないものだった。
実際、僕自身冥界には行ったことが無く、どの様なところなのかは文献や口伝などでしか知らない。
知識を蓄えることを良しとする僕にとって、目に納めて理解することは、大きな知識の獲得となること。森近霖之助としての一生を終えれば一度は冥界へと行けるのかもしれないが……さすがにそれでは遅すぎるだろう。

百聞は一見にしかず、見るは情報の母。出来るのであるならば、生きている内に一度は行ってみたい所だったのだ。

「……うーむ」

とは思うが、一つ、ある一つの問題が僕の決断を鈍らせていた。
それは、いつもいつも宴会などの誘いを断っている、絶対的であり重要な要因。
僕の声を聞いて、妖夢が少し目を見開いた。おそらく、僕が何を言いたいかを察したのだろう。

「誘ってくれるのは嬉しいんだが……君も知っているだろう?」
「騒がしいのは好きじゃない、ですか?」
「ああ。雪見や花見は静かに風情を楽しむものだ。酒を呑んでただ騒ぐだけの物は、雪見でも花見でもないただの宴会だよ」

そう、僕は騒がしい催しが苦手なのだ。喧々囂々とする場所で過ごすよりも、香霖堂で本を読んでいた方が幾分マシだと思う質である。
今回の雪見にも興味は惹かれたのだが、脳内の天秤にかけた結果、姦しい宴会よりも香霖堂で過ごす方がわずかに勝っていた。
そんな僕の話を聞いた妖夢は、「やはりそうでしたか」と苦笑いをした。

「確かに、良く神社で行われるアレを花見雪見とは言えませんね。ああでも、騒がしくなるだろうと思っていらしたのなら大丈夫です」
「おや、何か対策でもあるのかな」
「いえ、今回の雪見に呼ぶ人は、店主さん一人だけなんですよ」

テーマ : 東方プロジェクト
ジャンル : ゲーム

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まとめtyaiました【例大祭9・SS「雪色セレクション」サンプル】

例大祭までもうすぐと言うことで、例大祭9新刊予定の本から私のSSをちょちょいと。未だ予定となっているので不確定なのですが、このSSだけは出せるようにしております。オマケ程度の長さなので、ゆっくりよんでいってね!

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