スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

吸血鬼の鬼退治

今日は2月3日の48時50分ということで、節分のお話をひとつ。
2月3日の22時あたりでパッと思いたので間に合うかなぁと思ったのですが、なんとかギリギリセーフでしたね。
とりあえず間に合ったので良しとしましょう。ええ、良しとさせて下さいお願いします。



出てくる方々

霖之助 レミリア フラン
-------------------


「言ったでしょ店主。聞こえなかったの?」
「いや、聞いた、聞こえたさ。しかし君たちの言っていることは、無謀な気がしてならないんだがね」
「けどやりたいの! ね、お願いお兄様?」
「そう言われても……どうしろと言うんだ」


2月3日の夜、香霖堂。
僕こと森近霖之助は、我が儘な上客2人の言葉に悩まされていた。

上客というのは紛れもない、紅魔館の当主のレミリア・スカーレットのことだ。
普段は彼女の従者である十六夜咲夜が買い物に来るのだが、彼女の使用する資金はすべて紅魔館から出ている。
つまり、紅魔館を取り仕切る目の前のレミリアこそが、本当の上客と言えるだろう。
そしてもう1人はというと、レミリアの妹君であるフランドール・スカーレットである。
彼女は上客かと聞かれたら頷くに頷けないのだが、レミリアの妹に当たるので実質上客という立場であろう。
ただ、元より客でないわけでもないので、僕は普通のお客さんとして彼女と接していた。

そして今、その姉妹が僕に頼み事をしてきたというわけだ。
しかし、その彼女たちの頼み事という物があまりにも難解であって、こうして僕を悩ませているのである。
そんな姉妹の頼み事と言うのが、


「だから言ってるでしょ、私たちは豆撒きをやってみたいのよ」
「豆撒きって本でしか知らないから、1度やってみたかったの!」


――コレである。
実に命知らずな事では無かろうか。


「レミリア、フラン。君たちは吸血鬼であるのだろう?
 鬼であると言うことは、もちろん炒った豆は……」
「無論、触れたら痛いことになるわ。ついさっき館で実践済みよ」
「ジュッ!って焼ける感じで凄く痛かったよ」
「……だろうね。それで、どうやって豆撒きをするつもりなんだい?」
「あーもう、空気の読めない男ねぇ。
 私たち吸血鬼が豆撒きをしたいと言っているんだから、どうにか豆撒きをする方法を提供しろ、と言いたいのよ」


「言わせないでよ恥ずかしい! だったっけ」と少し首を傾げながらレミリアが言う。
彼女の言葉を聞いて、僕はようやく彼女たちがここへ来た理由を言葉通りに理解した。
彼女たちは香霖堂へ、新しい豆撒きの方法を、術を買いに来たのという訳なのだろう。


「……なるほど。すまない、そうだったのか」
「そういうことよ。さ、早く何か案を出して頂戴。内容によっては、それなりに報酬は出すからさ」
「お兄様、何か良い方法ない?」
「鬼が出来る豆撒き、か……」


彼女らに問われ、僕は「ふむ」と指を顎に当てて考える。

節分とは、一年で最も寒い時期から春に向けての出発点、つまり立春の始めに行われる行事だ。
最も寒い時期ということは、太陽が最も衰退している時期と捉える事が出来、追儺(ついな:今で言う節分)を太陽再生の儀式としていたらしい。
太陽再生によって招かれる「福」を太陽の暖かさと捉えるならば、追い払われる「鬼」はその逆の意味を持つ。
実際、鬼は「おに」と訓読みされるが、これは、陰(おぬ)が訛ったものとされていて……ここからは豆撒きの案はなさそうである。

そして僕が節分の由来から節分に撒く豆について考え始めたとき、ふと、あることを思いついた。


「む、そうか。あれなら大丈夫か」
「お、何か思いついた?」
「ああ。待っててくれ、今炒った豆に代わる物を持ってくるとするよ」
「豆に代わる? お兄様、それって豆撒きって言わないんじゃないの?」
「今に分かるさ。すぐに持ってくるよ」


そう言葉を残して僕は、仲良く首を傾げている紅姉妹を背に、ある物を取りに店の奥へと向かった。
確か、雪の冷たさを利用して保存しておいたアレがあったはずだ、と思いながら。







「で、何よコレ?」
「節分で撒くために使う物さ。これなら君たちでも気軽に豆まきが出来るだろう」
「あ、うん。確かに気軽というかこれなら普通に撒くことは出来るわ、出来ないはずないわ、うん」
「何か不満でもあるのかい?」
「不満というか、疑問ね。どうして……どうして、落花生なの? いや、豆っちゃ豆だけどさ」


僕の言葉にレミリアは、目の前にある疑問の正体を指差した。
目の前に置かれたそれは、先ほど僕が店の奥から持ってきた炒った豆に代わる代物。
去年の暮れに手に入り、加工後に雪で冷凍保存していた殻付きの落花生だった。


「元来、豆撒きで使用される豆は、炒った大豆であるのは知っているだろう。
 この炒り豆を使用する理由というのは、撒いた豆から芽が出てしまうと処理に困り、何かと不都合であったためであるという」
「何よ、単に面倒だったから炒り豆を使っていたってこと?」
「諸説あるから何が正しいかは言えないんだがね。火で水分を追い出し、死者の霊が蘇らないよう、豆を炒って芽を出さないようにしたという説だってある。
 とりあえず、豆は「魔滅(まめ)」に通じていて、邪気を追い払い、一年の無病息災を願うという意味合いがあるんだ。
 それならば、落花生でも炒った豆には変わりないから大丈夫だろうと考えたわけさ。それに、撒いた後もすぐに回収できて合理的だろう?」
「へぇ! 凄いわ、お兄様頭良いのね!」
「いや、それほどでもないよ」


フランが目を輝かせながらぴょんぴょんと跳ねる。レミリアも、「ふぅん、まぁいいか」と納得してくれたようだ。
僕からすれば、レミリアの我がまま……否、注文に上手く答えられる結果が出せたことに対して安心していた。
彼女はこちらからすればかなりの上客である。ひょんなことで機嫌を損ねられ、この店を贔屓してくれなくなると非常に困るのだ。

何とか上手く事が運んだので、僕は次の話に進むべく口を開いた。
豆は用意できたが、肝心のある物が足りなかったからだ。ここは僕の話術で纏めるしかない。


「して、豆の準備は出来た。
 後は豆をぶつける相手役を見つけるだけなんだが……残念ながら当店には、鬼の面は置いていなくてね。
 今なら博麗神社に行けば、おそらく本物の鬼が酒を呑んでいると思う。彼女に当たってみるのはどうだろうか?」
「あら、その心配はいらないわよ。ちょうど良い役の人がいるから」
「おや、すでに配役は決まっていたのかい? それなら安心だ、ならばすぐに勘定に入ると……」
「何を言っているの? 勘定に入るのは早計よ、まだ貴方には出番があるもの」
「……ん?」


レミリアの言葉に、算盤を取り出そうとしていた僕は何か嫌な予感がした。
勘定は早計、鬼役が元から居た、もしくは今決まったということ。そして、僕にはまだ出番があるということ。
……最悪な結末しか見えてこないのは、気のせいであって欲しいのだが。


「私は言ったわよね、ちょうど良い相手役がいる、と」
「ああ、それは今聞いたさ。
 今から紅魔館に戻って豆撒きをするのだろう? 豆撒きを終えてからの後払いということかい?」
「もーお兄様、鈍感なんだから。お姉様がここまで言ってるのに解らないの?」
「フラン。理解できないことは気にしない方がいいんだ、まさに今がそれなんだ」
「店主がしているのは、理解したくないことを気にしないようにしているだけでしょ?」
「あれ、ということはお兄様分かってるの?
 分かってて言わないなんて、ズルイのね。仕方ないなぁ、私が言ってあげる」


ふわりとフランが宙に浮き、カウンターを乗り越えて僕の目の前で静止した。
そして、射貫くようなほどの紅い瞳で僕を見つめながら、彼女はどこか嬉しそうに呟く。


「それじゃあ『鬼役』お願いね、お兄様?」
「……やはり、そうなのか」


ガクリと、僕は肩を落とした。
心なしか分かってはいたものの、実際に宣告されると地味にくるものがある。
そんな僕を見ながらフランは、「まったく、言わせないでよ恥ずかしいー」と楽しそうに笑いながら元居た場所へと舞い戻った。

そして、頃合いを見計らっていたのか、レミリアが背中の翼を勢いよく大きく広げ、高々と宣言し始める。


「さぁ、鬼による世にも奇妙な豆撒きを始めるとしようか!
 制限時間は今の子二つから日付が変わるまで。鬼が先に逃げる時間は四半時足らずとする。
 ひたすらに私たちから豆をぶつけられないよう逃げ惑うといい!」
「お兄様は、豆をぶつけられたら罰ゲームね!
 もしも私たちから逃げ切ったら、なんでも言うこと聞いてあげる!」


「無理だとは思うけどね、ウフフッ」とフランが嗤う。
その瞳は、新しいおもちゃを見つけたかのような無邪気な子供の瞳。
言い換えるならば、獲物を逃さんとする捕食者の瞳。


「私たちはこの店で待機しているとするわ。楽しませて頂戴ね、鬼近霖之助?」
「誰が鬼近だ、誰が」
「さて、カウントダウンをしよう。0になったら逃げると良いわ」
「頑張ってね、お兄様」
「拒否権は元より無いのか……店の戸締まりはお願いするよ」
「ふふっ、任せなさい」


ため息をひとつ吐いて、僕は外出用の靴に素早く履き替える。
上客の彼女らが決めてしまったことだ。今更何を言っても遅いであろう。


「10,9……」


レミリアのカウントダウンが始まった。
僕は小さなショルダーバッグを手に取り、ランプやお札などの夜に外出する際の道具を片っ端から入れていく。


「なーな、ろーく、ごーぉ……」


フランもカウントダウンを刻み出す……もう時間は残されていない。
ある程度の荷物を入れてバックを肩に提げ、覚悟を決めた僕はカウントが0を刻む前に香霖堂の扉を開け放った。


「さーん、にーぃ、いーち、始めー!」
「っ!」


そして、フランの開始の声と同時に、僕は店を飛び出し闇夜へと駆け出す。
彼女らに、鬼に豆をぶつけられないため、なんとしても罰ゲームを避けるため。

僕が見つかり豆をぶつけられる確率は、ほぼ100%と言っても過言では無いだろう。元々、負ける勝負を提案する種族でもないはずだ。


「だとしても、か」


ならば、そうであるならば、出来る限りの事はしてみようではないか。
頭の中で逃走経路とボディガードになりそうな人物を組み立て、僕は森の中を駆ける。
生憎と、禁止されている事はないほとんどが自由なゲームだ。そこにどう上手くつけ込み自身を守れるかに掛かっているだろう。
(まずは面白いことに真っ先に首を突っ込みたがる、あの魔法使いに話を持ちかけるべきだろうか? それとも、もう1人の……)
すでに息切れしながらも、思考を巡らせ草木を掻き分け木々をかい潜り、僕は更に走る速度を上げて森を駆ける、駆ける。

節分の夜に鬼を退かせず鬼から逃げるとは、これまた滑稽。
半人半妖、森近――鬼近霖之助の戦いは、今まさに、始まったばかりであった。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめteみた【小旅の物置】

今日は2月3日の48時50分ということで、節分のお話をひとつ。2月3日の22時あたりでパッと思いたので間に合うかなぁと思ったのですが、なんとかギリギリセーフでしたね。とりあえず間に合ったので良しとしましょう。ええ、良しとさせて下さいお願いします。出てくる方々霖之...

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

こたび

Author:こたび
二次創作SSを書いていたり。
このブログでは二次創作小説を取り扱ってます。
無断転載、著作権に関連する事は止めて下さいね。

当ブログはリンクフリーです。

何かありましたら、下記のツイッターに凸してください。アカウント無い方はブログトップのコメント欄でも大丈夫です。

一部の作品をPixivにて公開中ですます。
Pixiv

ついったーとやらもやってたり。

カテゴリ
同人活動履歴
例大祭9(2012/05/27)
藤色コンタクト
藤色コンタクト C83(2012/12/30)
太陽と霖が望む空
太陽と霖が望む空
例大祭10(2013/05/26)
鴉天狗のガールズパーティ! 鴉天狗のガールズパーティ!
リンク
FC2カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。