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風水の恩返し

神霊廟で布都ちゃんが可愛かったので、つい。

気づいたら布都ちゃんはこんなイメージで固まっておりました。
一生懸命だけどちょっと抜けてる子って可愛いですよね!

10/02追記:はらちさんに挿絵を描いて頂きました。ありがとうございますウオオオ!



登場する方々

霖之助 布都


--------------


時刻は、日が頂点に昇りきってすぐの午後の刻。

無縁塚からの帰り道。
新しく手に入れたアイテムを背負っていた森近霖之助は、目の前の光景を見て顔をしかめていた。


――人が倒れていた。
それも、道の真ん中でだ。


「……里の人間か。それとも、迷い込んだ人だろうか」


霖之助がそう言ったのは、ここが思念の道という場所だからであった。
無縁塚と魔法の森を繋ぐ中継地点、思念の道。
ここならば、無縁塚から外の世界の人間がこの道まで来てしまうということは、十分に考えられるのである。


「見てしまったからには、無視するわけにもいかないね」


背負っていた荷物を地面に置くと、霖之助はそのまま倒れている人の傍へと寄った。
その場にしゃがみ、倒れている人を軽く確認する。

うつ伏せで倒れているその人は、体躯から見るにどうやら少女のようだ。
頭には烏帽子のような、白紐が掛けられた黒く縦に長い帽子。
髪は後ろに纏められていて、ポニーテールのようになっている。
服装は神事の際に着られる様な白い着物で、丈は膝までという短めなデザイン。

見た限りの結論だが……人里の人間ではなく、更に外の世界の人間とも思えない容姿だった。
何より、昔の時代にあったような服装。それは、もう何百年も前の人ではないかと錯覚させるほどである。

もう少し確認しようと、霖之助が少女に手を伸ばしたその時、


「……ん、んぅ」


倒れていた少女が、声を出して体を動かしたのだ。
動いたということはつまり、間違いなく生きているわけで。


「! 良かった。僕の声は聞こえているかい?」


意識があるかどうかを確かめるため、霖之助は少女に声をかける。
すると目を覚ました少女が、うつ伏せのまま顔だけを霖之助の方へと動かした。


「ん、ぐぅ……お、おぬしは……?」
「ちょうど通りかかったら君が倒れていたんだ。
 それより大丈夫かい? どこか怪我をしたのかい?」
「おぉ、助かった。実はな……」


霖之助の問いに、少女が複雑な顔つきになった。
見た限り少女に損傷はないのだが、もしかすると内部で動けなくなるほどに傷を負っているのかもしれない。
もし怪我をしているのならば、今自分の持っている道具で応急処置が出来ればいいのだが。

そう思いつつ霖之助は言葉を待っていると――少女は小さく口を開き、


「……腹が空いたのだ」
「…………は?」


今にも泣き出しそうな声で、そう呟いたのだった。







「むぐむぐ……」


数刻後。
霖之助の横で、先程まで倒れていた少女が美味しそうにおにぎりを頬張っていた。

場所は思念の道から外れて魔法の森。
あの場所では危険だと判断した霖之助は、横に居る少女を抱えて魔法の森まで戻ってきていたのだ。
そして二人は、魔法の森で良く見られる地面から突き出た大きな木の根に腰かけていた。

もちろん、おにぎりの持ち主は霖之助だ。
霖之助は物を食べずとも生きていけるのだが、店を出る際に気分で作っておいたおにぎりが数個残っていたのである。

少女はそのおにぎりの最後の一欠けらを食べ終わると、これまた霖之助の持っていた水筒の水を貰って丁寧に口へと運び……飲み込んだ。


「むぐっ……けぷぅ、ご馳走様。
 ふぃ、助かったぞ。おぬしはいいやつなのだな」
「いや、別にいいんだが……どうしてあんなところで倒れていたんだい?」


少し古めかしい言葉で話す少女に対し、霖之助は疑問を返す。

霖之助が彼女を見つけたあの場所は、世間では再思の道と呼ばれる所である。
魔法の森を通り越して更に進んだ先に存在する、進むと無縁塚に行くことが出来る道。
そしてそこは、定期的に無縁塚に赴く霖之助にとっては、もはやお馴染みと言えるほどの通り道となっていた。

しかし、あの道はあまりにも危険な場所なのだ。
霖之助は妖怪に襲われにくい体質なので平然とあの道を通っているのだが、小悪な妖怪に遭遇する可能性が高い場所でもある。
更に無縁塚に近いこともあって、そこら一体には彼岸花の毒が蔓延しており非常に危険だと稗田の子にも言われているのだ。

そのような人が寄り付かない場所に、彼女は倒れていた。しかも空腹で。
今までそんな人など見たことが無い。普段この道を使っている霖之助にとって、疑問に思わないわけがなかった。

そして、そんな霖之助の言葉を聞いた少女は、しばし考えてから話し出す。


「うむ、ここ――幻想郷をまだあまり知らなくてな。
 こちらに居を構えて一段落したので、行脚がてら適当に歩いていたら……こうして空腹で倒れてしまったというわけだ」
「なるほど、君は幻想郷の地理を知ろうとしていた訳で……いや、待ってくれ」
「何かあったか?」


さらっと少女の口から出てきた文章に、思わず霖之助は耳を疑った。
話の内容から、彼女が外の世界の人だったのだろうというのは理解できたが、どうしても腑に落ちない部分があったのだ。
当のその言葉を発した彼女は、「なにぞ?」と首をかしげている。


「適当に歩いていたら空腹で倒れたと、普段聞きなれない文章が耳に入ってきたんだが」
「む、そうだな。確かに不自然に聞こえるか。
 いや、長らく死んでいたから、身体が鈍って空腹に反応しづらくなっていてな」
「んん?」


「恥ずかしい限りだ」と、頭を掻きながら少女が言う。

そんな少女からさらっと出た言葉に、再び霖之助は耳を疑った。
いくら幻想郷と言っても、聞けば誰でも耳を疑いたくなるような言葉。


「死んでいたということは、生き返ったというのかい? 君は一体……?」
「おお、そうか。そういえば自己紹介をしていなかったな。
 我が名は物部布都。ちょっと前に封印より復活した、尸解仙の道師をしている者だ」
「尸解仙……ああ、なるほど。君は仙人だったのか」
「うむ、そうなのだ」


仙人と言われて嬉しかったのか、布都が「えへん」と言うかのように胸を張る。
そして霖之助は、その布都の話を聞き、今までの話にようやく納得がいった。
尸解仙であるならば、彼女の「長らく死んでいた」などの言葉にも頷けるからだ。

尸解仙というのは、一度自らの身体を死なせ、自身の格を仙人に強制的に格上げした人間のことを指す。
おそらく彼女は、遙か昔に自身の身体を死なせ、彼女の言うちょっと前まで眠っていたのだろう。
いつ頃幻想郷に移ったのかは分からないが、長らく眠っていたわけだ。ここの世界を知らないというのも理解できる。
 
そして起きたばかりの生き物は、ちょっとした変化にはすぐに気づけないものだ。
彼女が空腹で倒れたというのも、長きの眠りで食欲が鈍っていたためなのかもしれない。
……それでも、限度というのがあると思うが。


「おっと、おぬしの紹介がまだではないか。
 我だけ名前を言うのもおかしいだろう。おぬし、名を何と言う?」
「ああ、僕は森近霖之助。
 香霖堂という店で店主をやっているよ」
「ほう、店主なのか――森近霖之助だな、覚えたぞ。
 我はおぬしを霖之助と呼ぶが、それでいいだろうか?」
「構わないよ。僕は布都と呼ばせてもらっていいのかい?」
「うむ……呼び捨ては少々慣れぬが、我もそれで構わんぞ」


名前呼びに少し抵抗があったのか、布都はちょっと考える素振りをした後に承諾した。
口調から察するに、もしかすると彼女は昔、位の高い人間だったのかもしれない。

霖之助がそう考えていると、布都が霖之助の持っていた水筒を感慨深げに見始めた。


「いやはや、時代というのは変わるものなのだな。
 おぬしが持っているこの……水筒だったか? 我の生きていた頃には存在などしなかったぞ」
「それはこちらでも珍しいものでね。僕だからこそ手に入ったものなんだ」


霖之助の持っている水筒は、一月ほど前に無縁塚で手に入れたものである。
「魔法瓶」という名前と「熱を保つ」という用途に色々と悩まされたが、なんとか理解し水筒という使い方を見出した代物。
なので今では、霖之助のお気に入り――「非売品」となっていた。


「ほぉ! こんな不思議なものが手に入るとは、おぬし、よほどの権力があるのだな?」
「ん? いや、僕は権力など持っていない。手に入ったのも運がよかったのだろうね」


ふと霖之助の脳内に、いつもの客でない二人の姿が浮かんだ。
香霖堂で権力を持っていると言えば、彼女たちのことを指すのではないだろうか。
……些か不服だが。


「いやいや、謙遜するな。
 うむ、おぬしの店とやらを見たくなってきたぞ。
 霖之助よ、こーりんどうとやらはどこにあるのだ?」


布都が身を乗り出し、期待するかのように霖之助へと聞いてくる。
何か勘違いをしているような気もするが、店に来てくれるというのなら話は別だ。


「ここから歩いてすぐの場所にあるよ。
 お客として来てくれるのなら、こちらも大歓迎さ」
「おお、近いのか。それはよかった。
 おぬしから貰った飲食の礼もしたい事だ、お邪魔してもいいだろうか?」
「もちろんだとも。
 それなら、ついて来てくれるかい? ここから店まで案内するよ」
「うむ、案内してもらおうぞ」


霖之助が木の根から立ち上がると、布都も一緒にぴょんと立ち上がった。
布都の嬉しそうな顔を見届け、背に無縁塚より手に入れた道具を再び背負う。

そして霖之助は、そのまま布都を香霖堂へと案内することにした。







「けほっこほっ。
 むぅ、埃っぽいというか、黴臭いというか……今の店はどこもかしこもこうなのか?」


また数刻。
あれから香霖堂に戻った霖之助は、そのまま布都を店内に招き入れていた。
すると入って早々、布都が涙目で咳き込み始めたのだが……そんなに酷いだろうか。


「僕の店は、道具と古道具を扱うからね。
 道具はもちろんのこと、使われなくなったり、捨てられたりした中古の道具を扱うことが多いんだ。
 黴臭い点については、多くの古道具に免じて目を瞑って欲しい」


そう言いつつ、店内の窓を開けて換気をしていた霖之助は、仕方ないといった風に肩を竦めた。

間違ったことは言っていない。
古道具の裏面などには、汚れや黴が付着するものなのだ。決して、この店自体が黴ているわけでは無い。決して。
そして、埃っぽいという点については……掃除を疎かにしていて弁論できないためスルーしていただきたい。


「そ、そうなのか、それは仕方ないかもしれんな。
 ふむ、よくよく見てみると、不思議で面白そうな物ばかりではないか」


換気のおかげで埃が少なくなったのか、咳き込まなくなった布都が店内をとことこ歩き出す。
不思議そうに商品を見つつ店内を回る布都に、霖之助は疑問を投げかけた。


「布都の生きていた時代に、古道具を扱う店というのはあったのかい?」
「存在していた記憶はあるな。
 ただ、外に出ることが少なかったから、実際に入ったことはなかったのだ。
 ううむ、道具屋というのは、こうも劣悪な環境なのだな。初めて知ったぞ」
「……まぁ、年季が入っているからね」


ぐるりと店を回り終えた布都が、どこか納得したように呟く。
何やら彼女に違った知識を教えているような気分だが、
特別な古道具を扱う店はここ香霖堂だけなので、そこまで深く気にすることも無いだろう。

……霧雨の親父さんの店は、彼女には伝えないようにしよう。


「だがしかし……うむ。
 劣悪な環境だからこそ、我の力の見せ所だな」
「どういうことだい?」


得意げに頷いている布都に、霖之助が問いかける。
すると彼女は、胸に手を当て話を始めた。


「我は道教を信仰する道士故、道術という力を持っていてな」
「道術か。確か……道教の符呪・神仙・養生を扱う術の総称だったかな」


道術とは、遙か昔、外の世界で信仰されていた道教の道士が使う術のこと。
基本は道具の使えない動物が使役する術で、人間が適応するようには出来ていない。
よく知られる方術と比べても扱う術に制限が掛かるが、使いこなせるようになれば遠隔操作が出来るようになる。

――と、霖之助は過去見た文献からそう記憶していた。


「おお、話が早くて助かる。
 我はその道術を使って気を操り、更に風水を操ることが出来るのだ」
「……なるほど。
 つまり、布都が言っていたお返しと言うのは……」
「そう、風水と道術の力を以って、この店の気をよい方向へと向けてせんぜよう。
 これならおぬしも嬉しかろうて、飲食の恩を返せると思ったのだが……」


後ろで手を組み、「どうだろうか?」と布都が霖之助を窺うように見ている。
そんな布都を見て霖之助は……自然と笑みが零れた。

何を気にすることがあるのか。
お礼をして貰う側としては、相手が真剣であるならどんな内容であろうとも嫌なはずが無いだろう。


「是非とも、今すぐにでもやって貰いたいくらいだよ。
 気を操るとは、なんとも素晴らしい能力だね」
「おお、良かった。ふふん、そうだろうそうだろう」


布都が嬉しそうに、どこか誇らしげに顔を綻ばした。
道教を信仰している身の上、道教に関わる事が認められるのが嬉しいのだろう。

布都のしようとしていることは、霖之助にとっても普通に嬉しいことだった。
仙術の中で制限が掛けられていると言えども、道術の数は沢山存在しており、願望成就、退散消滅などと言った繁栄に繋がる術が多い。
客足が増えたり、売り上げが増えるなどのことは、やはり店を構える身としては悲願ものである。

霖之助がそう考えていると、布都はぴょんと店の中心付近へと移動した。


「――それでは、早速始めさせてもらおうぞ。霖之助、準備はいいだろうか?」
「ああ、大丈夫だよ」
「よし。
 では、むむむ……――はっ!」


霖之助の了解を得るや否や、意気揚々と布都が何かを念じ始める。
そして彼女が掛け声放った直後、仄かな光が布都の周りから生まれ、その光が蛍のように舞いつつ店内を駆け巡る。
それと共に、彼女の足元と前方で、円形の方陣が描かれていくのが見えた。

描かれている方陣は、陰陽魚太極図に見える。道教における方陣の一つだったはずだ。
疑っていたわけではないが、布都が正真正銘の道士だと言うのは本当のようである。


「……――せいっ!」
「! おや……?」


布霖! 布都霖!


布都の最後の掛け声を合図に、香霖堂内を飛び回っていた光は方陣へと収束し、まるで泡沫のように消える。
それをきっかけに、霖之助は店の雰囲気がガラッと変わったのを感じた。
店全体の気が軽くなったような、まるで店を空気を丸ごと綺麗な空気と入れ替えたのではないかと思えるほどの変化。

道術は本当に、店に漂う瘴気までも取り払ってくれたと言うことか。


「……驚いた、これは凄いな。布都、ありが――」


道術の効能に感動を覚えつつ、霖之助は布都へ感謝の言葉を告げようとしたのだが、


「ふぅ、なるほど、こういった配置か。
 では霖之助。まずはこの椅子を向こう――南西に運ばせてもらおう」
「え?」


ピシリと石化をしたかのように、布都の言葉を聞いて固まった。

またもや耳を疑う言葉。
彼女は今、何と言ったのか。

霖之助は布都のその発言に、嫌な予感を感じずにはいられなかった。

とある巫女がよく腰掛けている椅子を軽々と抱えながら、布都が意気揚々と笑みを浮かべる。


「おぬし、道教を知っているのだから、風水の内容も多少は知っておろう?
 四神相応。
 風水は気の流れを作る他に、配置する家具の方角によって他の運気も集めることが出来るのだぞ?」
「あぁいや、風水のなんたるかは分かっているつもりだよ。
 僕が気になったのは、そういうことではなくてね」


背中を伝う冷や汗の存在に気づきながら、霖之助は脳をフル回転させる。
予想が間違っていないのならば、このままではとてつもない作業と化してしまう、かもしれない。

家具と道具たちがごちゃまぜになっている香霖堂で、家具の配置を変えるということは、店全体の家具の場所を入れ替えて行くことにほぼ等しい。
置く場所がないために店内が散らかっていると言うのに、わざわざ配置を決めてしまったら、その場所にある他のモノたちは、別の場所へと移動させざるを得ないのだ。
移動させざるを得ないという事は、必然的に動かすための労力が必要なわけで。霖之助と布都の二人では、あまりにも無理があるのではないだろうか。

身体が危険信号を察知し、考えを巡らせる霖之助。
だが彼を余所に、布都は何故霖之助が急に黙ってしまったのかと首を傾げた。


「霖之助、どうしたのだ?」
「あ、あぁ、わざわざ店全体の家具の配置を変えなくてもいいんじゃないかと思ってね。
 僕は今の状態で十分に満足したし……それに君も大変だろう?」


厚意からやってくれている布都を傷つけてしまわないよう、霖之助は慎重に言葉を選ぶ。

事実、香霖堂内の気は、先程までとは打って変わって良いものになっている。
もうこれ以上を望まずとも、霖之助は現状で十分と言えるほど満足していたのである。

だが、そんな霖之助をよそに、


「なーにを言っておる」


彼女は、


「おぬしは我の命の恩人なのだ。
 恩の一つもきちんと返せずして、仙人が務まるはずもなかろう」


笑顔で、


「それに、我は道教を認めてくれたおぬしが気に入った。
 おぬしのためなら、多少の無理は通そうぞ」


少し照れながら、
ものの見事に、霖之助の退路を塞いでしまった。


「……そうか、ありがとう。
 それじゃあ、運ぶとしようか。……運ぶと、しようか」
「うむっ。
 さぁ、我はこの椅子を運ぶから、次はおぬしが運ぶものを指示しようぞ」


嬉々としてカウンター近くの椅子を抱えている彼女を前に、泣き出しそうになるのをグッと堪え、霖之助は心の中で溜息を付いた。
こんなにも一生懸命な人に、止めろなどと言えない。言えるはずもない。


「ところで布都。
 この模様替え、いつまでやるつもりなんだい?」
「無論、家具を良い配置にすべて運び終えるまでだ。
 もし日が暮れそうならば、我は明日またここに来よう。やるなら徹底的にやろうではないか」
「そうか……そうかい」


やる気満々の表情で方陣を眺めている布都を見ながら、霖之助は店内を見渡す。
周りには道具と家具の山。時刻は……未の刻くらいだろうか。
……日が暮れるまでに、終わる気がしない。


「よし、霖之助。あの本棚は南が適所だな。
 付近に道具が散らかっているようだから、先に片付けておいてくれぬか?
 この椅子を置き次第、我も一緒に運ぶとしよう」
「……ああ、わかったよ。任せておいてくれ」
「うむ、では頼んだぞ」


布都は霖之助の返事に笑みを浮かべ、椅子を抱えて店の南西の方へと歩いていく。
それを見送った霖之助は、言われたとおりに店の南の方へと向かい、そこにある道具の山を見据えた。


「……掃除していなかったツケが来たのかもしれないね」


長らく箒に手をつけずにいたのだ。
これを機に掃除をしろ、と言う香霖堂からの啓示なのかもしれない。
数は大量、時間は僅か。
どうせやるのならば、少しでも早く終わらせて本を読みたいところである。

覚悟を決めて腕を捲くり、軽く息をつく。
そして、椅子を運んでいる布都をちらりと見てから、霖之助は長期戦になるであろう目の前の仕事へと取り掛かり始めた。

後で布都と食べるための茶菓子と、
明日には僕を襲うであろう筋肉痛を抑える薬は、先に分けておくべきかな。

……と、そんなことを考えながら。

テーマ : 同人小説
ジャンル : 小説・文学

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