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卑怯の向こう側。

お久しぶりです。
6月9日はむきゅーの日ということで、1日即興パチュ霖を。
日付がもう過ぎてるとか気にしてはいかんのです、いかんのです。

ANE(仮)さんに挿絵を描いて頂きました。Thanks!


登場する方々

霖之助 パチュリー
--------------

「卑怯だわ」
「……急にどうしたんだい?」


私ことパチュリー・ノーレッジの言葉に、隣に座っていた森近霖之助が眉をひそめた。
唐突に言ったのだから、怪訝に思うのは当たり前である。


「貴方の手の大きさよ。本を持ちながら読めるなんてずるいじゃない。私はテーブルに置きながらじゃないととても読めないわ」
「そう言われても、僕はこれが元々だからどうしようもないんだが……」
「どこかの本で、体の一部を入れ替えるとかいう呪文がなかったかしら。ねぇ貴方、ちょっと試して……」
「ぜひとも遠慮させて貰うよ」
「むきゅ、そう」


軽いやり取りを終えて、私は本の続きを読み始める。

紅魔館にある私の図書館。そこに置いてあるソファの両端に、私と彼はそれぞれ腰かけ本を読んでいた。
両端に座るといっても、ソファはそこまで大きくなく、大人が三人座れるか否かという程の幅である。
ソファの前には小さなロングテーブル、上には紅茶とケーキと積みあがった本の山。

たまに本を読みに来る彼に用意したスペースだったのだけれど、この方がすぐに疑問をぶつけ合う事が出来るため、私も一緒に座ることにしていた。
その方が不思議と読むスピードが上がるし、不思議と心地がいいのである。


「ここはこの考えでいいと思うんだが」
「ちょっと曲解だけど、うん、間違ってはいないわ。そういう考え方もあるのね」

「この術式はこうじゃないわ、水と木の属性が関わってて……」
「それだと、こちらの説明がつかないじゃないか。これは金がだね……」


本を読みつつ、議論を挟む。
そんないつもと変わらぬ作業をしていると、彼が私に思い出したかのように聞いてきた。


「ああ、そういえばパチュリー、この本の続きはあるのかい?」
「あ、それは……」


彼の寄越した本の銘柄を見た私は、軽く笑みを浮かべた。私の好きな本だったのだ。
本の続きを聞いてくれるという事は、その本を気に入ったわけであって。
……嬉しくならないわけがない。


「あそこにあるわね」
「……随分と高いところにあるんだね」
「ええ。そうそう盗まれないように、ね」


高いところに置いてある本は、私のお気に入りが多い。
何故わざわざ高いところに置くのか。それは、とある盗人から簡単に盗まれないためでもある。
そのとある盗人は、飛びながら本をあまり吟味しないので、本棚の低いところの本を持っていく可能性が高いのだ。
無論、最初から盗まれないように施術をかけておきたいのだが、読むたびに解除しなければいけないのがどうも面倒であって。
なので、どうせ盗まれてしまうのならと妥協した考えの元、今の本棚の配置に落ち着いたのである。


「梯子は無いのかい?」
「お生憎様無いわ。待ってて、今持ってくるから」


飛べない彼にとって、上の本を取るのは不可能に近い。
小悪魔に任せるという手もあったが、せっかくの二人きりだ。脳内会議で「小悪魔呼び」に却下が下された。

私は風の魔法を展開し、座標を定め……解き放つ。
そして棚に入っていた続きの本を捕捉し、こちらに引き寄せ、霖之助の膝の上にふわりと降ろした。


「ありがとう。こんなにも便利だと、僕も魔法を覚えようか迷うよ」
「楽するために覚えようとするのは頂けないわね。
 私のは、単なる魔術の研究の過程で覚えただけ。生活改善のためじゃないの」
「む、そうか。それは残念だ」


話が終わったため、彼が本を読む作業に戻る。


「……」
「……むー」


だけど、私は気が気でなくなってしまった。
彼は取り繕っているつもりみたいだけれど、残念そうな雰囲気が本人から駄々漏れているのである。

そんな雰囲気を出されたら、こちらが悪いような気分になる。
それに「彼だったら少しくらいなら」と教えそうになってしまうではないか。
彼が魔法を使えるようになったら、もっと私は討論が楽しくなるだろう。
だが、娯楽のために覚えるなど、魔法使いにとっては魔法自体を愚弄することに近い。

私は何度も頭を整理する。ジレンマだ。
全く、どうして彼の事を考えるだけでこんなに葛藤しているのか。


「もう、貴方って卑怯だわ」
「いや、またそう言われても、さっぱり脈絡が掴めないんだが」
「むきゅ……」


拗ねたように私は口を尖らした。
当の本人は気がついていないという有様である。無駄にもやもやした私の時間を返してほしい。

兎にも角にも、魔法の件は保留にしておこう。
これ以上考えてもグルグルとループしてしまう。無限ループは怖いものである。


(まぁ、気がついたら彼についてばかり考えている、そんな私も私だけども)


頬が紅くなりかけたとかは置いておく。
そんなことを考えてしまうのも、やはり中心には彼が居て。それもまた彼のせいであって。


「……やっぱり貴方は卑怯ね」
「む、またそれかい? 何度も言われて嬉しいものではないんだがね」
「違うわ、これは良い方の卑怯よ。良かったわね」
「先ほどまでのは悪かったのか……それに、良い方とは一体なんなんだ?」
「分からなかったらそれでいいの。安心して、何かあるわけでもないから」


そう言って私は、隣の彼の肩に頭をぽふんと預ける。
彼も彼でもう慣れっこなのか、反応もせずにバランスを取ってくれた。
……もう、それだけでも胸が暖かくなるから不思議だ。

パチェ霖

「ほんと、卑怯だわ」


彼に聞こえないよう、小さく小さく私は呟く。
別に聞こえてもいいけれど、分かってしまってもいいけれど、聞こえない方がもっともっと大切に思えるから。


森近霖之助は卑怯である。
ひねくれていて、鈍感で、ちょっと子供っぽくて、時々頑固な人なのに。

ただ一緒にいるだけで、こんなにも、こんなにも幸せなのだから。

テーマ : 同人小説
ジャンル : 小説・文学

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あ、あますぎる…やっぱパチュ霖はいいものですね
ただ二人で本を読むだけで映えますもの
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