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春を告げるは花粉猫。

実は嘘じゃなかった。今更ですね!

個人的に、猫って頭いいイメージがあるんです。そんなお燐霖。
時事ネタで行こうと思ったら、もう時期的に過ぎたっぽくて涙が出ましたよ、えぇ。

ま、春だからいいよね! あの春だから!



登場する方々

霖之助 お燐
----------------

「ふぁっ、くしっ!」


香霖堂に、可愛らしいくしゃみの音が響いた。
そのくしゃみの出元は、猫の耳が生えたある少女。


「……お燐、風邪でも引いたのかい?」
「うー、いや、花粉症なのさ。この季節になると困るんだよねぇ」


言葉の端々で眼を掻き、鼻をすすりながらお燐が言う。何度も擦っていたのか、ほんのり目が赤くなっていた。

間欠泉の怨霊騒ぎが収まってから、ふらっと香霖堂へと来るようになった地底の猫少女、火焔猫燐。
来るようになったといっても、店の窓際で丸くなったり店の壁で爪を研いだりと、まるっきり商品を買う気がないようである。
言ってしまえば彼女もまた、霊夢や魔理沙と同じようにここに来て寛ぐ……ひやかしの一員になっていた。
霖之助が彼女の事をお燐と呼ぶのは、他でもなくお燐自身からの提案であり、どうも本名で呼ばれるのは堅苦しくて苦手らしい。

そして、そんなお燐がいつもと違い少し鼻声気味なのは、彼女の言うように幻想郷で花粉が猛威を振るっている証だろう。


「おや、そうだったのか。猫である君が花粉症……てっきり人間だけかと思っていたんだがね」
「いやいや、花粉を甘く見てもらっちゃ困るよお兄さん。動物だって、妖怪だって花粉症になるのさ。
 おそらく幻想郷で花粉症にかかんないのなんて、スキマ妖怪とかフラワーマスターくらいだよ」


季節は春真っ盛り。
この時期になると、幻想郷にも杉などの花粉がこれでもかという程に飛散するのである。
今年は一段と量が多いらしく、霖之助は人里で花粉症が酷いという話を、霊夢や魔理沙からよく聞かされていた。


「あれ、そういえばお兄さんはやけに平然としてるけど……花粉にやられちゃってないの?」
「僕は半人半妖だから、病気にはあまり罹らないのさ。
 猛威を振るっている花粉症も、一時的な病のようなものだから影響が無かったんだろうね」
「ええー、いいなぁソレ。あたいも今だけ半人半妖になれれば楽なんだけどねぇ。
 ……うぁ、鼻出そう。お、お兄さん、ティッシュ貰っていいかい?」
「勝手に使って構わないよ。
 全く、簡単に言わないで欲しいね。僕だって病気に罹ることはあるのだから」


カウンターに置いてあるティッシュの箱をお燐に手渡す。
ここ最近、霖之助はさほど使ってもないのにも関わらず、流れるような勢いでティッシュが減っていくので少し困り物である。
無縁塚でよく拾えるので在庫には困らないのだが……いっそのこと、ティッシュにも料金をつけるべきだろうか。春の内は金銭に困らなくなること間違い無しだろう。

そう思っている霖之助は今現在、本当に半人半妖が功を奏したのか分からないが、花粉の被害に見舞われることはなかった。
霊夢や魔理沙からはかなりの顰蹙(ひんしゅく)を買ったのだが……これはどうすることも出来ないから仕方ない。


「む、ちょっと聞いていいかいお燐」
「ちーん! うぁー……何さお兄さん?」


ティッシュを大量に使い鼻をかんだせいか、少し涙ぐみ鼻が赤くなったお燐に、霖之助は少し気にかかったことを投げ掛けた。


「先ほど、花粉症だと困ると言っていたが……一体何が困るんだ?」
「ふぇ? ああ、簡単なことさ。鼻が詰まって通らないから、大事な死体の臭いがさっぱりしなくて探せなくなってるの。
 花粉症の薬を作ってる永遠亭とやらには怖くて近づけないし、この季節は折角の自慢の嗅覚が台無しだよ、もー」
「……永遠亭が怖い? 何か問題でもあったのかい?」


霖之助が聞くと、お燐が言い出しにくそうな表情で、気まずそうに頬を掻いた。


「ああいやぁ、なんだかあそこって近寄りがたいというか、前に見た時から地底には無い感じの、アブナイ臭いがプンプンしてるんだよね」
「臭い?」
「んー、薬品の臭いってのもあるんだけど。
 何ていうか、体が危機を感じるって言えばわかってくれるかい? 猫のカンってやつさね」
「危機……あぁ、なるほど」


少し合点がついてしまい、霖之助は苦笑いした。

永遠亭。
少し前の月の異変のときに現れた、診療所というべき場所である。
里の人や霖之助に薬を処方してくれるので有難いのだが……よくよく考えてみると、摩訶不思議と言っていいほど謎の場所なのだ。
どうやって薬を作っているのか、何故医者をしているのか、何故月の異変の時まで存在に気づけなかったのか……考えれば考えるほど疑問は湧いてくる。

しかし霖之助は、初めからそれ程危険ではないのだろうと思うことにしていた。もし仮に、永遠亭が危険すぎるのだとしたら、霊夢達が動かないはずがないからだ。
彼女達が動かない、異変として扱わないのであれば、それは直結して害は無いということになる。実際、霖之助自身も何度か世話になっているので、害が無いのはとうに分かっていたのだが。

それでも、永遠亭の彼女たちには失礼だが……お燐などの診療所になじみの無い地底の人々にとって、危機感、怪しさを感じる雰囲気とやらはまだ拭えないのかもしれない。何事も、初めは怖いものである。


「治療しに行けないか。……ん、そういえば」
「にゃ、どうしたのさお兄さん?」


ふと、霖之助はとある商品が香霖堂にある事を思い出し、更に一つの案が浮かんだ。
永遠亭に行けず、花粉症がどうにも出来ないのであるならば、あの商品はベストなのではないか。
そして彼女。お燐なら、色々と……。

頭で算段し、組み立てる。……この案ならいけるかもしれない。


「ふむ、そうか、そうだね。永遠亭に行けないのであるなら仕方ない。
 ……そこでだお燐、君に丁度いいものがあるんだが」
「へ? いいものって、猫缶とか?」
「それは丁度いいとは……まぁ、少し待っててくれ、すぐに持ってくるよ」


そう言って椅子から立ち上がると、霖之助は店の奥へある物を探しに入って行き……そして数十秒後、「待たせたね」と一つのダンボール箱を重たそうに抱えて戻ってきた。


「すまない、結構な量があって少し手間取ってしまってね。今、中身を取り出そう」
「おー、こりゃまた大荷物だねぇ。一体なんなのさ?」


持ってきたダンボール箱をカウンターへ降ろし、中身を並べていた霖之助にお燐が訊ねる。
パッと見ただけでは分からないらしく、彼女は頭に疑問符を浮かべて首を傾げていた。
それは仕方ない。地底に居た妖怪に、こういった物はあまり馴染みがないだろう。

霖之助は並べていた商品の一つを手に取り、お燐に手渡した。


「それは歴とした商品さ。それに書いてある文字を読んでくれれば、すぐに分かると思うよ」
「商品? えっと何々、『花粉を99.9%ブロック! 花粉の季節のお供に』……なんか、大層なことが書いてあるんだけど」
「そう、これらは外の世界の花粉対策商品なんだ。お燐が持っているのはマスクという花粉の侵入を防ぐやつだね。
 君が永遠亭に行くのに気が引けるのなら、こういった商品を買っていってはどうだい?」


永遠亭に行けず花粉をどうにも出来なくて困っているのならば、自然に花粉が収まるまで待つか、こういった商品しか打つ手はないだろう。
そしてその目的の商品があるのは、香霖堂のような特異ともいえるお店だけ。
つまり今のお燐は、霖之助にとって格好の客なのである。

そんな霖之助の説明を聞き、お燐が軽く頭を抑え参ったような顔をした。


「たはは、なるほど。イイ性格してるなぁお兄さん。
 うん、でも確かにあたいには丁度いい品物だね。それと、外の世界の物って良くキクそうじゃないか」
「あぁ、外の世界の技術は格段に進歩している。
 この商品の箱の精巧さ、記載してある謳い文句と医学的な視点からの立証……間違いないだろうね」


花粉対策の商品を見ながら、霖之助は感心するように頷いた。

客を惹き付けるための文句を、こんなにもでかでかと張っているのである。効果に自信があることには間違いない。
しかし、そんな堂々とした商品が幻想郷に流れ着くということは、外の世界ではもっと素晴らしい商品が競うように出ているのだろう。
その結果、今、幻想郷には素晴らしい商品が流れ着いている。そして、香霖堂の商売に一役買ってくれている。
……つくづく、外の技術には感謝感心するばかりだ。


「でも、うーん……ちょっとのお金はあるけど買えるのかが問題だねぇ」


商品パッケージの宣伝の甲斐もあったのか、お燐がいつもの深緑の服のポケットから財布を取り出すと……少し躊躇い始めた。
値段に困るということは、その商品を買おうか迷っているという滅多にないチャンスだということだ。


(よし、上手くいったか)


財布を手に悩んでいるお燐を見て、霖之助は心の中で笑みを浮かべていた。このままいけば、自身の目的が達成できるからである。
霖之助の先ほど思いついた案の目的。それは、お燐を介した地底の顧客の獲得というものだった。
霊夢と魔理沙から地底の話を聞いた時から少し興味を持っていた霖之助は、これを機に少しでもお客を呼び込みたいと思ったのだ。


(さて、あとはこちらから好条件を出せば、高確率でお燐は乗ってくれるだろう)


そう思っている霖之助が出そうとしている条件は、「無料で商品を提供する代わりに、地底の人々に香霖堂の宣伝を頼みたい」というもの。
お金がかからないというのは、買い手にとってはありがたい。霖之助はそれを利用しようと思ったのである。
お燐は地底の地霊殿という所から来ているそうなので、地底の人々とも何人か関わりがあるだろう。
それと彼女の性格からして、宣伝の一つや二つをする事は容易いはず。最終的にそれだけで商品を貰えるのだから、お燐にとってもおいしい話になるはずだ。

この商談、上手くいく。

しかし、その条件を言おうと霖之助が口を開こうとした瞬間、ポンとお燐が両手を合わせた。
そして霖之助に先駆けお燐の口から出てきた言葉は、霖之助が驚くには十分の内容だった。


「あ、そうだ。それじゃあ、あたいが料金になるよっ」
「……なんだって?」
「なんだって、ってそのまんまの意味さ。あたいがここに住み込んでお手伝いするってことだよ。おっけぃ?」
「いやいやいや、君が住むことで何のメリットがあるんだい。僕は店の手伝いを募集しても望んでもいないし、それに君には地霊殿があるだろう?」
「そこだよお兄さん」
「む?」


ビシッと、お燐が霖之助に向けて指を立てた。


「そう、あたいは地霊殿と、つまり地底と繋がってる。
 ここは道具屋だから、もしかしたら地霊殿で使える道具が流れて来るかもしれないんでしょ?
 もしそんな道具が来た時は、あたいが主のさとり様に直々に掛け合ってあげるよ」
「……ほぅ、仲介商人になってくれるというわけかい?」


お燐の言葉を理解し、霖之助は軽く笑みを浮かべた。
仲介商人とは、売り手と買い手の間で便宜を図る商人のことである。霖之助の考えていた宣伝よりも、遥かに商売が有利に働くのだ。

そして、その霖之助の回答に対してお燐が笑顔になった。


「さっすがお兄さん、大正解さっ。
 しかも、あたいは猫だから、店の縁起物としても効果抜群じゃないか。ね、いいでしょ?」


ねだるようにお燐が霖之助に擦り寄る。
完全に猫撫で声に聞こえるのは……さすが猫といったところだろうか。


「いや、確かにそうかもしれないがね。それとこれとは話が全く違うよ」


招き猫、店に客を招くという縁起物だ。
香霖堂には縁起物というと狸の置物しかないが……それでも、お燐に縁起を担いでもらう必要性はないだろう。
それに、お燐がやってくれる事自体、香霖堂に住み込むなどしなくても出来るわけで。


「それらを踏まえても、結局は君がここに住む理由にはならないじゃないか。
 今だって、君が地底と地上を行き来しているのだから、君が地底に帰ったその都度に伝えてくれればいいだろう?
 僕はその仲介だけで十分だよ。店の手伝いの為にわざわざ住み込んでもらうことはないさ」


そもそもお燐が自ら提案してくれた条件が、霖之助が望んでいた「宣伝」以上の条件である。
求めた物を遥かに越えた報酬を貰うのは、いち商人としても少し気が引ける。商人は貪欲さも必要だが、時には謙虚さも必要なのだ。
実際、今回のお燐が香霖堂に住もうとしている事は、望んでも求めてもいない、条件に分類されぬ事なので困っているのだが。

すると、そんな霖之助の言葉を聞いた途端、お燐が「しめた」といった顔になった。
嫌な予感が、と霖之助がそう思ったのも束の間、彼女は急に耳を垂れて見るからにしおらしくなった。


「……お兄さん、あたいの事いらないの?
 うぅ、そうだったら悲しいなぁ……お兄さんに捨てられたって人里に言いふらさないと」
「なっ!?」
「うーん、何て言おうかな。とりあえずはうわさが広まりそうな稗田家とかいう所から……」
「いや、待ってくれお燐。それはあまりにも濡れ衣じゃないか?」
「えー、だって、こんなに悲しいことはないじゃないかぁ」


よよよ、とお燐があからさまな泣き真似をした。……確実に分かってやっている。

店は何より、風評に滅法弱い。いくら些細な噂でも、波紋のようにあっという間に広まってしまうものなのである。
もしそうなってしまったとしたら、いくら噂が眉唾ものでも客足が遠のき、店には甚大な被害が出てしまう。

更に今回の件によって、魔理沙や霊夢になんて言われるかわかったものではない。
……二次災害の方が怖い気もするが、結果、どちらもマイナスへと傾いてしまうのである。それだけは勘弁だ。

そうつまり、いつの間にか霖之助は、お燐に脅されていたのである。


「……全く、酷いことをするね」
「むむ、何言ってるのさ。お兄さんだって取引持ちかけようとしたんだからお互い様お互い様。
 それに、お兄さんはあたいをここに住ませてくれるだけでいいんだよ?」
「君をここに住ませる、という条件はかなり大きいんだよ。君が住み込めるほど、香霖堂には食糧の余裕がないんだ」


住み込むということは衣食住を共にすることになる。
客間などにより、衣・住はあることにはあるのだが、霖之助は食べずに生きていけるわけで、食に関してはあまり十分ではなかった。
たまに食べるときは大抵魔理沙が食糧を持ってきてくれているため、香霖堂にストックはさほど残っていないのである。
猫缶はないことはないのだが……それはそれでまた別料金だ。


「あ、それなら平気さ。あたい怨霊食べて生きていけるから」
「っ、なんだって!?」


お燐の言葉に、霖之助は思わず先ほどと同じ事を口にしてしまった。
それが面白かったのか、お燐が笑顔で快活に答える。


「え、だから怨霊だよ? 地獄猫はそんなもんなのさっ。
 へへん、食の面で困っているんだったら、これで万事解決だよね?」
「……怨霊を食べれるなんて、聞いてないんだが」
「あはは、今まで聞かれなかったからねぇ。で、どうするんだいお兄さん、衣食住のすべてがおっけーになったよ?」


お燐が詰めの一言、といった風に霖之助に問いかける。
霖之助の出した問題が解決してしまったということは、お燐を拒む理由が無くなったというわけであって。


「ほらほらお兄さん、どうなのさー?」
「ぐぐ、それは……」


ぐいぐいと霖之助に迫り、お燐が揺さぶってくる。
断ろうとすれば、断ることは出来る。だが、拒んでしまうと結果変な噂を広められてしまう。
……花粉の商品を使ってお燐を誘導するはずだったのに、いつの間にか立場を逆転されてしまった。


(まんまと嵌められ……いや、これは自業自得か)


元より、花粉商品をお燐に安く提供すればよかったのかもしれない。欲が湧きすぎた末路だろう。
だが結局はたられば論。今は今を受け入れるしかない。

霖之助は先ほどのお燐のように頭を抱え、深くため息をついた。
とどのつまり、お手上げである。


「はぁ……分かった、分かったよ。条件を飲もう。
 そのかわり、手伝いとここの商品の仲介はしっかりしてくれよ?」
「やったっ、商談成立だね。
 いやぁ、お兄さんはいい選択をしたね。これで商売繁盛間違いなしだよ!」


ぴょこんとお燐が軽く跳ねた。嬉しかったのか、彼女の尻尾がぶんぶんと前後左右へと揺れる。


「全く、いい選択も何も、君がこうなるようにしたんじゃないか」
「にゃはは、そうなんだけどね。でも、あたいが『黒猫』だからってこともあるんだよ。
 黒猫が店にやってくると幸せが訪れる。つまりお兄さんはラッキーを手に入れたのさっ」
「幸せ……そういえば聞いたことがあるな。黒猫はさらに縁起がいいんだったか」


昔から黒猫は縁起が悪いと言う所もあるが、少なくとも商売に関しては幸運の象徴なのである。というのを、霖之助は本で読んだ覚えがあった。
なんでも、黒い猫は『夜でも目が見える』等の理由から、「福猫」として重宝されてきたらしい。


「そうそう、さすが物知りお兄さんだね。
 それに、黒猫は恋煩いにも効果が……って、これは言わなくていっか」
「ん? 何が言わなくてもいいんだい?」


お燐が言葉の最後に言った事を、霖之助は聞き取ることが出来なかった。


「いやいやなんでもないよっ。
 ほら、そんなことより、猫と庄屋に取らぬは無いっていうじゃないか。目の前の幸運を逃しちゃダメだよっ」


霖之助の問いかけをさえぎるかのように、ギュッとお燐が霖之助の腕に抱きついてくる。

猫と床屋に取らぬは無い。猫が鼠を取らない訳が無いように、床屋も賄賂を受け取らない訳が無いという意味だ。
お燐の言葉からして、床屋を道具屋に、賄賂を黒猫という幸せに言い換えているのだろう。確かに道具屋が幸せを拒む理由は……当たり前だが無いだろう。


「なるほど、これは……やられたね」
「あ、酷いなぁお兄さん。あたいのおかげで幸運が来るんだからいいじゃない?」
「だからだよ。君を、つまり黒猫という幸運は拒めないという事だろう? やれやれ、上手く言ったものだ」
「へへ、またまた正解だよお兄さんっ。それと、もう片方の意味を忘れちゃ駄目だからね?」


お燐が霖之助の腕に尻尾も絡めてくる。そんなお燐の頬はほのかに赤くなっていた。


「もう片方?」
「ちょ、言わせないでよ恥ずかしいなぁ。ほら、猫と床屋は、なんだから」
「……? どういうことなんだい?」


霖之助は気づいていなかった。
お燐の言った「猫と床屋に取らぬは無い」という言葉の、「猫」の意味に。

そんな霖之助を見て、お燐が呆れ顔になった。


「あちゃー、お兄さんって本当に鈍感だねぇ。
 ん……でもまぁいっか。その方が、後々分かった時面白そうだし」
「む、後々分かるのかい。それなら、今考える必要はなさそうだね」
「そうそう、後々分かると思うよ。……春だから、早くて今日の夜に、ね」


この「猫」というのは、まさしく言った本人であるお燐を表していた。
そして、その「猫」が取ろうと、食べてしまおうとしている鼠というのは……。


「いやぁ、まさかこんなチャンスがやってくるとはね。
 ふっふふー、覚悟しててね、おにーいさん?」
「? あ、あぁ」
「春だもんね、仕方ないよね。うん、春だしねぇ」


春だから、あの春だからと言いながら、頬を紅く染めたお燐が妖艶に微笑む。
お燐の心情など露知らず、意味を理解出来なかった霖之助は、そんな彼女を見ながら疑問符を浮かべるしか出来ないのであった。

春。動物達にとってそれは……。

テーマ : 同人小説
ジャンル : 小説・文学

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