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花の名。

花は咲くだけではない、って祖父が言ってました。

店主と客の関係だけど、お互い理解し合ってるって良いよね! そんな幽香霖にしたかっt(
幽香は取り繕ってるけど乙女。ここ、テストに出ますよ。



登場する方々

霖之助 幽香
---------------------------

「店主、いるかしら?」
「君か、いらっしゃい。久しぶりだね」
「えぇ、去年の秋の終わりぶり、かしら」


季節は春。
大地に命芽吹く季節に、いつもの彼女が「香霖堂」へとやって来た。
名は風見 幽香。フラワーマスターの彼女が来ると、やっと春が来たのかと霖之助は心から安心する。

差していた日傘を閉じ、壁に立て掛けているその幽香に、霖之助は声を掛けた。


「そうか、もう君がここに来る季節になったのか」
「あら、春告精みたく言わないで欲しいわね。なんだか馬鹿にされてる気分よ?」


霖之助の方を振りかえった幽香がふふ、と笑う。
決して怒っているわけではない。春に会うときは、これがいつもの挨拶のようなものなのだ。
そして、いつもの決まった挨拶を霖之助は返す。


「おっと、これはすまなかったね。
 さて、それで今日は何を御所望かな。期待に応えられればいいんだが」
「大丈夫よ、新しい花を育てるために小さめの植木鉢を貰いに来たの。ここなんだから、それくらいならあるでしょう?」


そう笑みを浮かべながら話す幽香の服の胸元に、一つの花がついている。

いつだったからか、霖之助は幽香から「花言葉」というものを教えてもらった事があった。
なんでも、花にはそれぞれ意味があり、そのときの感情や相手への気持ちを表す、というものらしい。
「これで今の私の機嫌や感情が分かるのだから便利でしょう? 参考にするといいわ」と彼女は言っていた。つまり、その花を見て今の自分の感情を簡単に知ってもらいたいのだろう。
実際、彼女が不機嫌のときなどを見分けられるのは非常にありがたい。分からずに下手な言葉を選んでしまったら……どうなるかわかったものではないからだ。

そして、今回彼女が付けてきた花は「アゲラタム」。その花言葉は「信頼」を表す。
最上位妖怪の彼女に、この店の品揃えを信頼されているのは嬉しいものだ。店主冥利に尽きる、といったところか。

ならば、その信頼に応えるのが店主の力の見せ所だろう。
そう思い霖之助は、机の下から彼女の要望の品を取り出しトンと机に置いた。


「これだね。いつもこの時期には必ず買いに来てくれるから、用意しておいて良かったよ」
「あら、嬉しいわね。ここに来ている甲斐があったというべきかしら?」


フワリと幽香が笑う……さながら花のように。
そして、彼女は植木鉢を受け取ると、花の装飾された財布を取り出した。


「はい、お代よ。それじゃあね店主、また来るわ」
「お買い上げ、ありがとうございます。また宜しく頼むよ」


代金を受け取った霖之助が言うと、「えぇ」と幽香はまた笑みを浮かべる。
そして、壁の日傘を手に取ると幽香は帰っていった。

流れるように受け、答える2人。それは一連の動作のようなもの。
店主とたまに来るお客、霖之助と幽香はそんな関係なのである。











「……店主、いるかしら?」
「幽香か、いらっしゃい。今日は……なにかあったのかい?」


梅雨入りの6月、雨の中幽香は香霖堂に現れた。……見たところ、少し元気が無いみたいだが。
霖之助が聞いてみると、彼女は一つ溜息を吐き、口を開いた。


「最近、雨が多くて花が育ちにくいのよ。元気じゃ無い花を見てると嫌になるわ」
「そうか、ここ数日はずっと雨だからね。……君の力で花を復活させられないのかい?」
「そうしたいけれど、植物は自然に育てたほうが雄弁な花を咲かせるの。己の力で生きようとする花に力を貸すのは好ましくないわ」


言いながら、幽香は傘の水滴を切って扉に立てかけ、近くの椅子へと座った。その彼女の服に在る花は「東雲菊」……だったか。
「東雲菊」の花言葉は「困難に耐える」。やはり花が心配なのだろう。

そう推測している霖之助に、幽香は用件を告げる。


「今日は鴉除け貰いに来たの、あるかしら?」
「鴉除け? 花畑に鴉が寄ってくるのかい?」


霖之助がそう聞くと、幽香はまた一つ溜息を吐いた。


「そうなのよ、この悪天候に加えて最近は人間やら天狗が荒らしに来て面倒なの。今回はまず、その鴉の対策が欲しいのよ」
「鴉。……まさか」


それを聞いて、霖之助は嫌な予感がした。人間や天狗、もしかしなくても彼女たちだろう。
自身が彼女達に何か唆したわけではないが、知り合いが彼女を傷つけてしまっているのは……申し訳ない。


「それは……すまないね」
「? どうして貴方が謝るのよ?」
「いや多分、その花畑に来ている子達はここの常連だからさ。少なからず関わっているのかもしれないから、ね」
「へぇ……そう」


霖之助の言葉を聞いた幽香が、スッと目を細めた。
すると、彼女の付けていた「東雲菊」が急に「弟切草」へと変わった。花言葉は……「裏切り」「敵意」。

そんなあまりに急な彼女の感情の変化に、思わず霖之助は驚いてしまった。


「っ!? どうかしたのかい?」
「いえ、なんでもないわよ。
 ただ、貴方にデリカシーというのが無いのがよく分かったわ」


幽香は座っていた椅子から立ち上がると、立て掛けていた傘を手に取った。


「そういう事じゃなかったのに……今日はもう帰るわ。また今度」
「あ、あぁ」


そう言うと、彼女はそのまま何も買わずに帰っていってしまった。
店に残るのは、彼女が付けていた花の残り香と、元の店の静けさだけ。


「……やってしまったな」


ガランとした店内で、霖之助は顔を顰めた。……彼女を怒らせてしまったようだ。

店を出て行く彼女の顔は、とても悲しそうにしていた。
もしかすると、彼女が欲しかったのは商品でなく、謝罪でもなく、他の言葉だったのかもしれない。


「……また今度、か」


呟き、霖之助は安心する。
不謹慎だが、また今度ということは、再びここに来てくれるということだ。
ならば……


「後悔しても、仕方ないからね」


一つ、霖之助は決め事をしてカウンターから立ち上がると、店の裏の倉庫へと向かうことにした。











「店主、居るかしら。居るわよね」


数ヵ月後の夏のある日。珍しく花を付けていない幽香が香霖堂に現れた。
そして幽香の姿を見た霖之助は、彼女が来てくれた安堵からか笑みを浮かべる。


「あぁ、居るとも。僕はここの店主だからね」
「……貴方がそんな風に笑うなんて珍しいわね。今日は厄でも降るのかしら?」
「失礼な、と言いたいがやめておくよ。君が来るのを待ってたんだ」


霖之助が言うと、いつものように壁に傘を掛けていた彼女がピクッと反応した。
……流石に露骨過ぎただろうか。まぁ、元々そのつもりなので気にはしないのだが。


「待っていた、ということは……この前の?」
「そういうことさ。……この前はすまないことをしたね」


言って、軽く頭を下げる。勿論、この前というのはあの梅雨の日のことだ。
頭を下げた霖之助を見て、幽香はやれやれと言った風に額に手を当てた。


「妙なところで真面目なんだから……もう気にしていないからいいわ。だからここに来たってことくらい、貴方だったら分かるでしょう?」
「そうかもしれないが、店主として失礼なことをしてしまった責任は取るさ。だからお詫びとして、これを君に渡したくてね」


顔を上げた霖之助は近くの棚から、あの梅雨の日に倉庫から持ってきていた物を取り出し、幽香に手渡した。
彼女の手の中で、それは美しく輝く。


「あら、これは……ネックレスかしら」
「ああ、外の世界のネックレスさ。何でもとある有名な所の品物らしい。これで、どうか先日の非礼を許してもらえると嬉しいんだがね」
「……もう、気にしていないって言ったでしょう?」


全く、といった風に、幽香が受け取ったネックレスぶら提げる。

それはシンプルな金のチェーンで出来ており、中心部には向日葵のペンダントがあしらわれていた。
途中でチェーンの長さを調節できるように細工がしてあり、ペンダントの掘りも美しい。
さすが有名所のというべきか、素晴らしい出来と言えるだろう。


「ふぅん、なかなか素敵じゃない。この綺麗な向日葵とか……っ!」
「どうかしたかい?」


と、ネックレスを眺めていた幽香の顔が一瞬驚いた表情に鳴ったかと思うと、また一瞬でサァッと綺麗な紅に染まった。
驚いた霖之助がそんな珍しい幽香を見ていると、ギギギと鳴るんじゃないかと思う程の動きで、彼女は首を霖之助の方へと向けた。


「あ、貴方にしては、やってくれるわね。不意打ちだったわ……」
「ん? 僕はただ渡したいものを渡しただけなんだが……?」


何故幽香は顔を紅くしているのかと疑問に思ったが、全く検討がつかない。
そして、彼女の言葉の意味も、霖之助はその時理解することが出来なかった。


「全く、してやられたわ。……もうっ、今日は帰らせてもらうわよ」


そう言って、幽香はいつもの所に立て掛けていた日傘を手に取った。


「おや、もう帰るのかい? てっきり何か買っていってくれるかと思っていたんだが」
「貴方、こんな気持ちにさせておいてよく言えるわねぇ……」


霖之助の言葉に対してむすっとした顔で、しかし頬が紅い状態のまま幽香は霖之助を軽く睨んだ。
……こちらとしては全く持って理解できていないのだが、どうしたものか。


「とにかく、コレはありがたく頂くとするわ。買い物はまた別の機会に。それでいいでしょう?」
「ふむ、まあ構わないよ。僕自身もそれを渡したかった、という目的は達成できたからね」
「っ! また貴方は……!」


今度は強く、幽香が霖之助を睨んだ。今にも貫かれそうな覇気を感じるのは……気のせいであって欲しい。


「……ふん、それじゃあまた来るわ」


そう言って幽香はきびすを返し、そのまま店から去っていった。





幽香が店を去ったのを見届けた後、ふと霖之助は店のドアに花が落ちていることに気がついた。
ドアの近くにあったということは、間違いなく幽香が仕掛けたのだろう。

カウンターから出て、霖之助は落ちていた花を手にとって見てみる。


「これは……『オキザリス』か?」


一人呟く。
ドアに挟まっていた花は、紛れもなく「オキザリス」の花であった。
花言葉は……「喜び」。


「! そうか、そういうことだったのか」


先ほど幽香に渡したのは、金のチェーンで出来た向日葵のネックレス。そのネックレス受け取り、彼女はあのような反応をした。
何故彼女があのように反応をしたのか分からなかったのが、今、霖之助は全てを理解出来た。

そう、向日葵の花言葉の一つは、「私の目はあなただけを見つめる」。
……おそらく、この推測は間違いないだろう。


「これは……まいったな」


頬を掻きながら霖之助は呟く。つまり、知らず知らずのうちに彼女にとんでもない言葉を伝えていた、というわけだ。


「……まぁ、間違ってはいないんだが、ね」


そんな霖之助の呟きは、誰に届くわけもなく、店内に少しだけ響いただけだった。











「店主、居るかしら。いないと困るのだけど」


もうすぐ冬が到来する秋の終わり。首にあのネックレスを掛けた幽香が、一つの小包みを持って香霖堂へと現れた。
この時期はもう花はほとんど無いので、彼女がここに来るのは非常に稀な出来事だ。


「あぁ、いらっしゃい幽香。この季節に来るとは珍しいね」
「えぇ、もう冬が近づいているし、今年私がここに来るのも最後だと思うわ。
 それに、そろそろ頃合いだと思ったの。……だから、これを貴方に」


そう言って幽香が持っていた小包みを開けて、トンとカウンターに置く。
小包みに入っていたもの。それは、真紅の「薔薇」の花が咲いた小さな植木鉢。

霖之助は一瞬驚いたが、すぐに意味を思い出してみる。
幾つかあるが……アレで合っているはずだ。

そう、薔薇にある一つの花言葉は。


「幽香、これは……あの意味でいいのかな?」
「えぇ、これが今の私の言葉。さぁ、貴方はどうなのかしら?」


幽香が霖之助に問いかける。ほのかに顔が紅いのは気のせいではないだろう。
そんな幽香を見て、霖之助は軽く息を吐いた。……返事など、当に分かっているだろうに。


「全く、いつかは僕が先に渡そうと思っていたんだがね。僕は……これさ」


そう言って霖之助は、カウンターの下から一つの花を取り出した。
この時のために、幽香にも誰にも気づかれないように、枯れないように、大切に育てていたとある花を。


「! そう、それは……嬉しいわ」


そして幽香は、霖之助の出した花を認めると、ゆっくりと笑みを浮かべた。
それはまるで、太陽の下で咲き誇る向日葵のように。


「まさか用意してたなんて……貴方もなかなかにロマンチストね」
「僕は君が持ってくるとは思ってもなかったさ。
 そのせいか、今はかなり恥ずかしいよ。これではほぼ……っ」


と、続けて話そうとした霖之助の口を、幽香は人差し指で軽く抑えた。


「いいじゃない。こうしてお互い分かり合っているんだもの」


そう言って幽香がカウンターをふわりと飛び越え、霖之助の膝上に舞い降りるように座った。
そして、彼女はすかさず霖之助の首に腕を回す。……いわばお姫様抱っこだ。


「冬が深まる前に、最高のプレゼントを貰えて嬉しいわ。……ねぇ、貴方は今どんな気分?」
「……まぁ、悪い気はしないよ」
「あら、素直じゃないのね」


ふふ、と幽香が不敵に笑う。
それと同時に、彼女の首に下がっているネックレスが瞬いた気がした。


「素直も何も、この花が全部表現してくれているじゃないか」


頬をかきながら、霖之助は幽香と自身の用意した花を見た。
花言葉を知らない人が見たら、ただただ疑問符を浮かべるだけであろう。

幽香が持ってきた薔薇の花、霖之助の用意していたとある花。


「そうね。でも、男性はきちんと言葉でも言って欲しいわ。女は花で男は言葉、がステキだと思わない?」
「……どうせ、断ったら酷いのだろう?」
「えぇ、もちろん」


有無を言わさない笑顔。そんな笑顔が似合うのは彼女しかいないかもしれない。
そして、そんな彼女に惹かれた自分も自分だ、と霖之助は心の中で苦笑いをした。


「わかったよ、仕方ない。
 ……その代わり、一度しか言わないよ」


軽く息を整えて、霖之助が幽香を見据える。
幽香も幽香で、霖之助の言葉を、今か今かと待ち望んでいるように見えた。

……面と向かって言わずとも、既に伝わっているのに。


「幽香、僕は君を……」


もうお互いの気持ちは分かっているけれど、伝えて損は無いだろう?

そう自問自答し、すぐ傍にある幽香の目を見て、霖之助は言葉を紡ぐ。
過ぎゆく季節の中、いつか花言葉で伝えようとしていた気持ちを、花の香りと言葉に変えて。




霖之助が幽香に渡そうと、用意していた花は……桃色の「胡蝶蘭」。
その花言葉は――

テーマ : 同人小説
ジャンル : 小説・文学

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何となく予想がつきましたが、花言葉をググってみて思わずニヤニヤ。
花を介したやり取りってホント乙女チックですねぇ。

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